写真は車両 羽後本荘駅のYRー3003

由利高原鉄道鳥海山ろく線、元は国鉄再建法の第1次特定地方交通線に指定され1981年(昭和56年)に廃止が承認された旧国鉄矢島線です。それを1985年(昭和60年)に第三セクター転換、羽後本荘〜矢島間23.0kmを鳥海山ろく線として由利高原鉄道が引き継いだものです。第三セクターは沿線自治体の本庄市、由利町、矢島町(現・由利本荘市)などが出資しています。

トップ画像は羽後本荘駅で出発を待つ由利高原鉄道YRー3000形気動車。2012年から2014年に3両が国と秋田県の補助金で製造された新型車両です。2014年に製造されたYRー3003は沿線の子吉川をイメージした青で配色されています。

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子吉川は鳥海山から日本海に流れ込む1級河川です。鳥海山ろく線は大まかに子吉川に沿って走り、子吉川を2度渡ります。

沿線には農地が広がり極めて長閑です。しかし冬景色、ただ雪原が茫漠と白く広がっていました。その中を気動車は粛々と進んでゆきます。雪に包まれて気動車のエンジン音が低く聞こえますが印象としてはとても静かです。

矢島駅は1938年(昭和13年)に旧国鉄矢島線羽後矢島駅として開業しました。1981年(昭和56年)までは構内に本庄運輸倉庫の専用線があって近隣産の木材や穀物の貨物輸送が行われていました。跡地は由利高原鉄道の車庫に使われています。

列車は終点の矢島駅に到着。左奥に車庫があるのが分かります。

駅名標。

2002年に東北の駅百選に選ばれた立派な木造駅舎です。由利高原鉄道本社も併設されています。

駅出入り口は1箇所。駅には直営の旅行センターや売店があって、広い待合室がありました。

早朝なので閉まっていますが売店を営む佐藤まつ子さんの「まつ子の部屋」があります。

前日の夕方(1月下旬)列車到着後、雪が深いので宿までどうやってたどり着くか思案してた筆者に暖かい桜茶を差し出してくれたのがまつ子さんでした。和服を着たとても元気な女性です。

鉄道ファンの多くが矢島駅でそのまま折り返すらしく、まつ子さんが「次の列車で帰るのかい?」と訊くので、筆者が今夜は矢島に泊まるというと「なんにもないよ〜」と笑いながら喜んでくれました。

その後「そんな靴(スニーカーを履いていたのです)じゃ、宿まで歩くのは無理だ。もう売店は閉める時間だから宿まで送ってあげるよ」と旅館までまつ子さんが車で送ってくれました。美味しい居酒屋の情報も教えてもらい、雪で少し回り道をしたついでに由利高原鉄道の魅力を色々と話してくれました。筆者はすっかり由利高原鉄道が好きになってしまったので、暖かくなったらまたまつ子さんに会いに行きたいと思っています。

矢島は盲腸線の終点です。7時47分発の羽後本荘行に乗って戻ってゆきます。YRー3001号車は鳥海山麓の豊かな緑をイメージする配色です。

矢島の夏はすごく暑いんだそうです。こんなに冬の寒さが厳しいのに・・・。しかし、通学の子供たちは元気よく挨拶してくれるし、親切なまつ子さんが駅で待っていてくれます。泊まった旅館の方にもお世話になって矢島の話をたくさん聞きました。

この様に、由利高原鉄道はとても暖かな列車を運行しています。今度は緑豊かな季節にノンビリと訪れたいものです。

(写真・記事/住田至朗)