「峠の釜めし」で全国的に有名なJR横川駅は、信越本線で軽井沢に向かう碓氷峠越えの拠点駅として、長い間全ての列車が補機の連結・解放を行っていました。その停車時間に乗客が購入したのが「峠の釜めし」だったのです。

今もホームにはおぎのやの売店があります。駅そばもやっています。軽井沢の駅そばも「おぎのや」で「駅そば発祥の地」と書かれています。

横川駅の歴史は古く、1885年(明治18年)に開業しています。1893年(明治26年)には軽井沢駅まで開通、日本初のアプト式鉄道として専用の蒸気機関車「国鉄3900形」がドイツから輸入されました。しかし非力な蒸気機関車では急勾配を登るのが困難で横川駅から軽井沢駅まで何と1時間15分もかかっていました。1912年(大正元年)には横川駅〜軽井沢駅間が電化されて国鉄ED40形アプト式電気機関車がドイツから輸入されました。これにより横川〜軽井沢間は49分に短縮されました。

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軽井沢駅に静態保存されている国鉄ED40形アプト式電気機関車。

1963年にはアプト式から粘着方式による碓氷新線が開通して横川〜軽井沢間は24分にさらに短縮されました。しかし全ての列車に補機として2両編成のEF63形が横川駅側に連結され、軽井沢までは「押し上げ」、軽井沢からの下り勾配ではブレーキの役割を果たしたのです。

碓氷峠鉄道文化むらのEF63形電気機関車

北陸新幹線が部分開業した1997年(平成9年)10月に横川〜軽井沢間は廃止されました。1893年(明治26年)以来、約100年ぶりに横川駅は終端駅となったのです。

現在の横川駅終端部。すぐ向こうに「碓氷峠鉄道文化むら」の入口が見えます。

駅名標。島式ホームの向こう側は、現在は駐車場になっています。

木造駅舎は古くからのものです。

駅前のおぎのや本店にはアプト式の車軸が飾られていました。後には「峠の釜めし」のイルミネーションです。

かつては碓氷峠越え用の補機などのために駅には広大な敷地があり横川運転区もありましたが、現在は「碓氷峠鉄道文化むら」となって鉄道ファンの人気を集めています。

(写真・記事/住田至朗)