吾妻線は盲腸線だ。終点の大前は終端駅になる。元は群馬鉄山(1963年閉山)で採掘された鉄鉱石輸送のための貨物専用線として1945年(昭和20年)渋川〜長野原(現・長野原草津口)までの長野原線が開業した。長野原から鉄山のあった太子(おおし)までは日本鋼管社の専用線が敷かれた。

長野原線は1952年(昭和27年)国鉄に移管、1954年(昭和29年)旅客営業を開始。鉄山閉山(1963年)後、太子までの日本鋼管社専用線は1966年(昭和41年)貨物便運行が廃止され休止、1971年(昭和46年)に廃止された。

1971年(昭和46年)大前まで延伸開業。線区名が吾妻線に改称された。当初は嬬恋まで敷設される予定だった。1961年(昭和36年)には嬬恋〜信越本線豊野間が予定線となったが工事は未着工のままになった。旧国鉄の財政逼迫と、調査した嬬恋村の地熱が高く長大なトンネルが技術的に困難という判断もあったらしい。

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政治的に二転三転した八ッ場ダムの予定地が正にこの吾妻線の途中にある。そのためダムで水没する部分があり、2014年(平成26年)9月25日に岩島ー長野原草津口間が新しい線に付け替えられた。

筆者はその前に旧線区間を通るために2014年7月25日に吾妻線を大前まで往復した。その時の写真を紹介する。乗ったのは115系電車だった。
115系吾妻線

渋川を出発して約1時間弱、岩島駅を出て1km程で新線への分岐点が近づく。新たに吾妻川(を堰き止めて作られる八ッ場ダム)を渡る第二吾妻川橋梁の姿が見えてきた。
岩島新線分岐点

7/25の時点ではまだ線路の敷設工事をやっていた。ハレーションをきるために手でレンズを被った時に、列車の窓ガラスに置いた筆者の指が写ってしまった。失礼いたしました。
岩島新線分岐点

日本一短い樽沢トンネル(7m)を抜けて、水没する予定の川原温泉駅に着く。2016年11月現在、この旧駅は跨線橋を含め解体され跡形もないらしい。
旧川原湯温泉駅

吾妻線で開業当時から残る唯一の木造駅舎だった。水没前に解体されたらしいが、惜しい。
旧川原湯温泉駅
旧川原湯温泉駅

長野原草津口の手前で左から新線の線路が近づいて来た。
長野原草津口

後方を見ると新たに吾妻川(を堰き止めて作られる八ッ場ダム)を渡る第三吾妻川橋梁から新しい線路が延びてきている。
長野原草津口

渋川を出て96分。終点の大前に到着。駅の標高は840.4m。高尾山の頂上よりも遥かに高い。
大前

駅名標。1971年(昭和46年)開業。
大前

終端駅の線路は車止めでオシマイ。この車止めの先に、もしかしたら嬬恋を通って信越本線豊野までの線路が作られたかもしれないのだ。
大前

駅の横を吾妻川が流れている。
吾妻川

吾妻川にかかっている橋には昭和33年(1958年)竣工とあるから駅の出来る13年前にかけられていたことになる。この橋を渡って長い坂道を登り国道144号に出ると大前の集落がある。
吾妻川

実は付け替えられた新しい線路を通ったことがない。紅葉の季節でもあるし、久しぶりに行ってみたい。

※写真は全て筆者が2014年7月25日に撮影したものです。