寝台列車ファンは行くべき 食堂車モチーフのレストラン「THE CENTRAL」

8月3日(月)に開業した「グランスタ東京」では、飲食店に限っても新規34店舗・1,000席分のスペースがJR東京駅の改札内に登場し、最高の駅メシを揃えて利用者を迎え撃ちます。

普段から東京駅を利用する方なら一カ月ほど時間をかけて一店舗ずつ開拓して回るのも”アリ”ではないかと思いますが、地方在住者、通勤・通学で駅構内を経由しない方にとっては頻繁に通う場所ではありませんし、せっかく東京駅へ来たのに迷って時間を無駄にするのも勿体ないものです。

と、いうわけで。今回は鉄道チャンネル記者おススメの「まずここだけでも!」というガチ飯3店舗をピックアップしてお届けします。

豪華寝台車から受け継いだデミソースで最高のハヤシライスを

「STATION RESTAURANT THE CENTRAL」 総料理長の五十嵐章氏

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まず一店舗目は食堂車風レストラン「STATION RESTAURANT THE CENTRAL」。すでに多数のメディアで紹介されていますが、本店では寝台特急「北斗星」「カシオペア」などでメニューを監修した五十嵐章氏が総料理長を務めます。

何をおいても注目すべきは食堂長自慢のスペシャルハヤシライス。「北斗星」や「カシオペア」そのままのお味というわけではありませんが、豪華寝台列車で用いられたソースを2020年の東京に相応しい形で受け継ぎ、さっと焼いて炒めた牛ロースとあえてご提供。これがもう、美味いんです。書かれている情報だけですでに美味しいんですけど、実際に食してみると、このデミソースの絡んだ牛ロースにさっくり歯が通る。

牛ロースのハヤシライスは2,200円、牛ほほ肉なら1,700円でいただける

かつて寝台車を利用したことのあるシニア層がメインターゲットなのか、ランチの価格帯は若干お高く2,000円越え。日々の昼食として頼むにはちょっとリッチな感もあり、少なくとも記者のお給料で通うと破産してしまいますね。

そんな時は牛ロースではなく「牛ほほ肉」を使ったハヤシライスを頼むとよいでしょう。牛ロース版よりワンコインお安く、絶品ソースはそのままに「カシオペア」や「北斗星」の味を堪能できます。もちろん、他の洋食メニューも間違いないお味ですよ。

デミソースを軸に組み立てられた他の洋食メニューもしっかり美味しい
店内は食堂車モチーフ、ただし通路幅などは広めで快適に過ごすことが出来る

内装は特定の食堂車をモチーフにしたものではなく、あくまで「食堂車風」のつくり。たとえばテーブルとテーブルの間隔(通路幅)は実際の列車より広く取っており、座席が揺れたりもしません。

しかし「THE CENTRAL」はグランスタ東京の地下1階に作られているため、直上のホームを通過する列車の走行音が聞こえます。目をつぶれば気分は食堂車……旅行にも行きづらい昨今の世の中ですから、まずは舌と耳で豪華寝台の旅を味わってみるのはどうでしょうか。

新幹線で鮮魚輸送、業態は回転ずしと海鮮居酒屋

「羽田市場」代表取締役兼CEO 野本良平氏

JR東日本グループは過去に何度も「新幹線を使って鮮魚輸送を行う」貨客混載物流の実証実験を行ってきました。

【参考】
「やまびこ」に乗った”ウニ” 新幹線を使った海産物輸送の可能性を探る
https://tetsudo-ch.com/8062995.html
北陸初の新幹線鮮魚輸送 「うまさ一番 富山のさかなフェア」今日から東京駅で――JR西と東が連携
https://tetsudo-ch.com/10043499.html

美味しい海の幸を最も新鮮な状態でいただくなら、現地に行くのが一番――それが今までの常識でしたし、これからも変わりません。しかし、新幹線による鮮魚輸送体系が確立した場合は、様々な漁港で水揚げされた朝獲れ鮮魚・海産物をその日の内に東京で提供することも可能になります。

グランスタ東京に新たに開店した「羽田市場」は、その名の通り羽田空港をハブとし、各地で獲れた鮮魚を空輸することで当日の夜には提供する速度重視のサービスを提供していました。グランスタ東京の開業にあわせ東京駅構内に新たに店舗を構え、新幹線鮮魚輸送や高速バスネットワークによる鮮魚輸送を加えることで、羽田発着便のみでは厳しかった東北方面の魚介を充実させる形です。

8月3日開業からは、仙台や函館で朝獲れた鮮魚・魚介類が当日昼~夕方にはもう店頭に並ぶ

たとえば、青森に関しては当日朝水揚げした魚を深浦駅経由で新青森駅に運び、8時台の便で東京駅へ輸送、昼から提供。新函館北斗駅からは12時過ぎに東京駅着。宮城の朝獲れは石巻でのせりなどを経て午後二時ごろ着、晩には提供可能になります。

「宮崎県で朝獲れたアオリイカ、函館からスルメイカ、北陸からヤリイカが来る。この産地の全く異なる三つのイカを当日のランチで食べられる」(野本氏)――個別に最も鮮度の高い状態で食べるなら現地でいただくのが一番ですが、産地違いのバリエーション豊富な最速グルメが楽しめるのは東京駅ならでは。

野本氏は「東京駅周辺のチェーン店にも魚をお分けすれば、東京駅全体・丸の内界隈で『新鮮な魚は東京駅で』というメッセージを発信していける。うちが起爆剤になればいいな、と考えている」とも述べています。そのうち「朝獲れ海鮮なら東京で」という時代が来るのかもしれません。

近大生まれのマグロが東京駅へやってくる、受験生向けのパンフレットも

近大卒の魚を用いた朝御膳

近大マグロは近畿大学水産研究所が32年もの歳月をかけ、完全養殖に成功したクロマグロ。世界の水産資源持続に寄与するのみならず、近大の知名度をグッと押し上げました。もはや近大と言えばマグロのイメージ、というのは言い過ぎでしょうか?

グランスタ東京にオープンするのは、近畿大学の養殖魚専門店の3号店「近畿大学水産研究所 はなれ」。店内インテリアとして学生の書画を飾り、近大生まれの「鷹島本まぐろ」や「ふかうら真鯛」といった養殖魚、農学部が監修した「金賞健康米」などを提供します。鉄道的な見所こそないものの、世間的には注目度の高い店舗です。

近大卒の養殖魚の名前を散りばめた湯飲みも販売 珍しい名前がずらり
店舗内にはファッション誌のような大学案内も 中身は結構面白い

“完全養殖でサステナブルな「近大マグロ」は、身のみならず頭から尻尾まで料理として提供されており、さらに皮から財布などの製品を作るなど余すところなく活用されています。”と店舗ウェブサイトにも記載されていますが、それを象徴するかのように、本店オープンに合わせて近大マグロの中骨エキスがたっぷり入ったフリーズドライのお味噌汁が開発されました。これがまた滋養たっぷりで、二日酔いの朝なんかに飲むと最高に染みそうな味わいでした。

以上、グランスタ東京の個人的なおススメ3店舗を紹介してみました。その他にも「五の皿」が美味しい「ありま鮨し」やブラックカレーでおなじみの「東洋軒」、日本酒を取りそろえた「はせがわ酒店」など、社会人向けのグルメ店舗が目白押し。遠方から東京駅を訪れたり、また新幹線で遠くへ旅立つ際は、ぜひグランスタ東京に寄ってあなた自身のエキナカ”ガチ飯”を開拓してみてくださいね。

文/写真:一橋正浩