島秀雄記念優勝著作賞に「鉄道を支える匠の技」など

島秀雄優秀記念著作賞①。単行本部門の3作品4冊

ここからはもう一つの本題「島秀雄記念優秀著作賞」のご紹介。初代会長、島秀雄氏の名を冠した著作賞は、名称通り鉄道図書や雑誌記事を対象にした顕彰制度です。2008年の創設から13回目、今回は単行本部門3作品、定期刊行物部門(雑誌記事)1作品、特別部門2作品を表彰します。

単行本部門は青田孝さんの「鉄道を支える匠の技」(交通新聞社)、清水武さん、田中義人さん共著の「名古屋鉄道車両史」(アルファベータブックス)、在羽テヌヒト(ハンドルネーム。本名・田嶋玲)さんの「黎明期の貨車移動機」(交現社在羽製作所)、定期刊行物部門は高田圭さんがレイル109号(エリエイ)に寄稿した「JR奈良線の歴史を探る」、特別部門は岡本憲之さんの「『ニチユ機関車図鑑』(イカロス出版)ほか一連の著作に対して」、東北福祉大学・鉄道交流ステーションの「『むかし、秋保まで汽車が走ってた。』ほか一連の企画に対して」が選考されました。

島秀雄優秀記念著作賞②。定期刊行物部門の記事を掲載した「レイル」

鉄道を支えるものづくりの現場を取材

島秀雄優秀記念著作賞③。特別部門の2作品3冊(東北福祉大はパンフレット)

各作品を〝1行紹介〟すれば、「鉄道を支える匠の技」はものづくりの視点で鉄道業の現場を紹介。「名古屋鉄道車両史」は、さまざまなルーツを持つ名鉄の車両群をビジュアル重視で網羅しました。「貨車移動機」は、貨物鉄道駅で貨車の入れ替えに活躍する小型機関車のこと。資料もほとんどない中での詳細な調査には感心させられます。

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「JR奈良線」は、私鉄の奈良鉄道にさかのぼる沿線の歴史的構造物を現地調査。「ニチユ機関車」の岡本さんは、全国鉱山鉄道や軽便鉄道といったマイナーな鉄道の調査研究をライフワークとします。2007年に開設された東北福祉大の鉄道交流ステーションは、40回近い企画展で鉄道趣味を掘り下げました。

最後に須田会長の年頭メッセージをお届けします。

「2020年は鉄道にとっても大変な年でした。コロナ禍で4、5月頃は新幹線のお客さまが対前年9割減と激減しました。「のぞみ」も、1両数人の乗車というような列車も少なくない状況でした。コロナ禍収束後は、多くのお客さまにご利用いただき経営を建て直さねばなりません。鉄道を趣味とする皆さまも〝鉄道の友〟としてご愛用を特にお願いしたいと思います。鉄道友の会もウィズコロナ・ポストコロナの時代にふさわしいモデル行事を企画し、それを新時代の友の会の基盤としていくよう努力していきます。」

文/写真:上里夏生