第2幕~国鉄汐留駅隣接地に常設劇場~

札幌に続くJRと劇団四季の第2幕は1998年、東京で幕を開けました。東京都港区に、「JR東日本アートセンター四季劇場[春]」と「JR東日本アートセンター四季劇場[秋]」の2劇場がオープン。両劇場はともに、JR東日本が施設を所有し、劇団四季が運営に当たりました。大阪のキャッツ・シアターや札幌のJRシアターとの違いは、期間限定でなく期限を定めない常設劇場とした点です。

2つの劇場が設けられたのはJR浜松町駅東側約400mのJR社有地で、昨秋のウォーターズ竹芝(正式には「Waters Takeshiba」)のコラムにも書きましたが、国鉄汐留駅隣接地。現在のJR東日本からは飛び地になります。初演のプログラムに選ばれたのは[春]が『ライオンキング』、[秋]が『ミュージカル李香蘭』でした。

【関連記事】
祝「ウォーターズ竹芝」街びらき 竹芝は日本最初の鉄道駅・汐留に隣接する歴史ある地
https://tetsudo-ch.com/10851234.html

ADVERTISEMENT

その後、[春]はライオンキングを2017年まで20年近くにわたりロングラン公演、[秋]は『ジーザス・クライスト=スーパースター』『劇団四季ソング&ダンス』『コーラスライン』『エビータ』『サウンド・オブ・ミュージック』といった多彩な演目が上演されました。開設時に標榜した、ミュージカル文化定着という目標は十分に果たされました。

両劇場は、JR東日本の「竹芝ウォーターフロント開発計画・Waters Takeshiba」のスタートで、2017年で一旦クローズドになりましたが、ウォーターズ竹芝のまちびらきに合わせて2020年10月、「JR東日本四季劇場[秋]」がオープン。さらに満を持して今回、「JR東日本四季劇場[春]」が幕を切って落としました。

両劇場のプロフィールを簡単に記せば、[秋]は約1200席で、こけら落とし公演の『オペラ座の怪人』をロングラン上演中。年明けにオープンした[春]は[秋]を上回る約1500席の規模で、収容人数は劇団四季専用劇場として最大規模になります。

『オペラ座の怪人』。怪人がクリスティーヌをさらって地下に船で向かいます。本当の湖のような舞台装置とスモークに注目! 写真:阿部章仁
『オペラ座の怪人』の「マスカレード」シーンでは、仮面舞踏会で踊る出演者の華麗な衣装に目を奪われます。 写真:阿部章仁

エピローグ~鉄道は文化をも運ぶ~

JR東日本四季劇場[春]の開場記念作品に選ばれたのは、『劇団四季 The Bridge ~歌の架け橋~ 』。新劇場にふさわしい新作ショウで、「劇場は生きている。最初に何を響かせるかはとても大切なんだ」という劇団創立者・故浅利慶太氏の熱い思いが、物語のいたるところに散りばめられています。タイトルには、コロナをはじめとする困難な時代を乗り切りたいという強い意志、そして四季劇場が「明日への架け橋になる。劇団四季や、その作品があらゆるものにとっての『来し方』と『行く末』を架け橋になる」の願いが込められているように感じます。

『The Bridge』は2021年2月11日で終了。その後しばらくの幕間を挟んで、6月からディズニーの最新ミュージカル『アナと雪の女王』の上演が予定されています。

読み返せば少々気負った書き方になってしまいましたが、実際の舞台は楽しさいっぱい。珠玉の四季ナンバーが相次いで繰り出され、四季ファン、ミュージカルファンはもちろん、ミュージカル鑑賞は初めてという方も十分に楽しめるでしょう。

本稿は国鉄、JR北海道、そしてJR東日本の取り組みを中心に紹介しましたが、ほかのJRグループや私鉄各社もさまざまな形で文化振興に貢献しています。「沿線の劇場でのイベントにツアーを組んで、増収に役立てる」という直接的な狙いもありますが、それよりむしろ、「鉄道は旅客だけでなく、文化を運ぶ手段でもある」の思いがあふれるようです。

文:上里夏生 写真協力:劇団四季