ヨーロッパアルプスが鉄道を救った!?

中世の面影が残る首都・ベルンには、次世代型路面電車のLRTが走ります。 写真:bloodua / PIXTA

ここからはスイスの話。最初に、日本とスイスの鉄道の類似点を挙げてみます。現代のヨーロッパは完全な〝クルマ社会〟ですが、唯一の例外といえるのがスイス。スイスで鉄道が見捨てられなかったのは、山岳国という国土条件が主な理由で、建設費に道路財源を充当するスキームが確立しているのも鉄道の衰退を防ぎました。

スイスの場合、最近の鉄道新線建設は都市近郊の短絡線などのバイパス線が中心です。日本でも2019年11月に開業した「相鉄・JR直通線」、2021年1月にJR東日本が事業許可を受けた「羽田空港アクセス線」をはじめ、整備新幹線を除けば、鉄道新線は既設線の連絡線や延長線がほとんどで、これが両国の共通点といえます。

高品質のダイヤで利用されるスイス鉄道

鉄道チャンネルの読者諸兄に興味を持っていただけそうな、スイス鉄道のダイヤの話題を披露しましょう。日本でスイス鉄道研究の第一人者といえるのが高知工科大学の大内雅博教授で、ここではセミナーで聞いた講演内容をエッセンス的にまとめてみました。

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スイスは鉄道が自動車よりシェアを伸ばす数少ない国ですが、その理由は国鉄に当たるスイス連邦鉄道が利用しやすいダイヤを組み、高品質の輸送サービスを提供してきたから。スイスの面積は九州とほぼ同じで、人口は860万人ほど。輸送量は日本の地方幹線と同程度で、条件的に恵まれているわけではありません。

スイスは環境負荷軽減を狙いに国策として連邦鉄道を支援しますが、「鉄道が支持されるのは、質の高い輸送サービスが利用者に受け入れられるから」というのが、大内教授の基本的な見解です。