鉄道版「ツルの恩返し」!?

前章で取り上げたメトロ鷺沼車両基地の話題は、本書にこぼれ話のコラムとして掲載されています。コラムは全部で50本近く、鉄道のトリビア満載。拾い読みするだけでも、ちょっとした〝鉄道博士〟になれそうです。

その中で、私が秀逸と思えた一本。明治時代の鉄道黎明期、お雇い外国人のイギリス人が鉄道建設や列車運行に当たっていました。運行課長だったのがページさん(ウォルター・ページ)。日本人職員がダイヤの作り方を聞いても絶対に教えず、ダイヤ作成時は部屋のドアを閉めて、作業を誰にも見せませんでした。

ある日、少しだけ開いたドアの透き間から日本人職員がこっそりのぞくと……。ページさんは大きな紙を広げて並んだ横線の間に斜めの線を引いていました。こうして日本人はダイヤ(ダイヤグラム)の引き方を知ったのでした。私は思わず、「鉄道版・ツルの恩返し」と呼びたくなりました。

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「これからの海外都市鉄道」はB5サイズ、303ページ。写真や図版多数。私はコラムや記事を書く際の辞書代わりに活用しています。制作・発売は出版社のぎょうせいで、一般書店やインターネット書店で購入できます。

全自動運転のドバイメトロと下路式高架橋。鉄道は近代的でも、何もない駅前や高架下に日本との違いを感じます。(画像:「これからの海外都市鉄道」から)
カイロメトロ(エジプト)の車両基地。車両は日本よりやや小ぶりのように見えます。ドアが外吊りというのが外観上の特徴です。(画像:「これからの海外都市鉄道」から)

文:上里夏生