「建設しないけれど、当社にはプラスになる路線」 地下鉄新線プロジェクトで東京メトロの見解が判明【コラム】
「久喜発半蔵門・有楽町線経由森林公園行き!?」運転の可能性も
最初はメトロ有楽町線の延伸線です。新線は有楽町豊洲で分岐して北東方向から東陽町手前で北方に向きを変え、半蔵門線住吉につながります。有楽町線は東武東上線や西武池袋線、半蔵門線は東武スカイツリーラインとそれぞれ直通運転しますから、整備効果は路線図を見れば一目瞭然。あくまで想像ですが、「久喜発メトロ半蔵門・有楽町線経由森林公園行き」なんていう列車ができるかもしれません。
東京都は、①東京圏で最も乗車率の高いメトロ東西線の混雑が緩和される ②東京の国際競争力強化で拠点になる臨海部へのアクセス利便性が向上するーーの2点で、建設の意義を強調します。誰が造るかに関しては、「既存路線(有楽町線、半蔵門線)を含めた運行上や、技術的な観点から、メトロが整備・運行するのが合理的」とします。
メトロが「新線を建設しません」とする点について、都は「費用負担などについての整理が必要」の考えを示しました。メトロの「新線を建設しない」を認めた上で、「もう一度考え直しましょう」と主張するようです。
「メトロネットワークへの関連性はある」
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東京メトロの見解も、若干微妙です。まず「完全民営化を目指す上で、新線建設は行わない方針」の原則を再確認します。その上で、「仮に建設への協力を求められるとしても、経営の健全性を崩さないことが大前提」と主張。つまり、「求められれば協力はしますけれど、お金は負担しません」ということです。株式を上場して純民間企業を目指す東京メトロは、利益を確保して健全経営を維持するのが最大の使命。当然過ぎる考え方です。
資料によると、メトロは「(有楽町線延伸は)メトロネットワークへの関連性はある」とします。有楽町線と半蔵門線がつながれば、便利になってお客さんは増えるでしょう。「新線はメトロにとってプラスになる」と認めているようです。
最近の鉄道新線は、建設主体と運行主体が分かれているのが普通です。例えば、相鉄・JR直通線は列車運行するのは相模鉄道ですが、建設したのは鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)で、今もJRTTが施設を持っています。個人的見解ですが、「新線は都やJRTTのような公的セクターが建設して、開業後はメトロが運行する」が、現実的折ちゅう案かもしれません。答申を待ちたいと思います。
開業すれば十分に元は取れる
前回コラムで書き漏らしましたが、地元の江東区は2017年に「(豊洲~住吉間)整備計画調査報告書」を作成しています。要点をインデックス的に記せば、新線は豊洲ー住吉間約5.2キロ(営業キロ。建設キロは約4.8キロ)で、駅は有楽町線側から豊洲、ステーション1、東陽町、ステーション3、住吉の5駅。ステーション1、3は、駅名も位置も未定です。
国交省の試算では、新線の建設費は概算1560億円で、利用客数1日当たり27万3000人~31万6000人。費用便益性、いわゆるB/Cは2.6~3.0で、十分に元が取れる計算です。