「建設しないけれど、当社にはプラスになる路線」 地下鉄新線プロジェクトで東京メトロの見解が判明【コラム】
メトロ南北線をリニアや羽田空港につなぐ品川地下鉄線構想
2番目の都心部・品川地下鉄線構想。東京メトロ南北線・都営地下鉄三田線の白金高輪から分岐して、品川に至ります。図で見る限り、新線は品川止まりでJR線との相直はなさそうです。検討ルートは2案あり、都営地下鉄高輪台駅の北側を通るか、南側かの違いです。
都は「品川は、リニア中央新幹線や羽田空港への広域的な交通結節点。品川駅を都心とつなぐことで、都心部の発展に寄与できる。品川駅周辺の開発効果を広域に広げる可能性も大きく、地下鉄線構想を早期に具体化すべき」と主張します。
メトロの考え方は、有楽町線と同じなので省略しますが、品川地下鉄線に関しても「開業すれば、メトロにとってプラスになる路線」と認めているようです。
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国交省の試算では、建設費は概算800億円で、利用客数は1日13万4000人~14万3000人。費用便益性は2.5~3.1で、有楽町線の延伸と同じく元が取れそうです。
東京駅から豊洲、有明へ
最後は都心部・臨海地域地下鉄線構想。秋葉原が起終点のつくばエクスプレス(TX)を東京駅まで延伸、そこから銀座を経て、臨海部に向かいます。資料で路線イメージが示されましたが、東京駅からのルートは、築地、晴海、豊洲、有明と、晴海通り沿いを走ります。詳細は未定ですが、東京駅まではTX、そこから先はTXとは別の事業者が運営します。
東京都は、晴海、豊洲、有明といった臨海部の発展可能性に期待。「都内中心部と臨海部が一体的な地域として認識され、両地区の発展可能性に資する」と、こちらも事業計画を加速させるよう求めました。
東京メトロは有楽町線延伸線や品川地下鉄線と違い、「自社にとっての整備効果はない」としているようです。
コロナは都市交通の利用を変える!?
国交省は有識者委の資料で、「ポストコロナ社会における地下鉄整備のあり方」を提起しました。コロナはテレワークやワーケーションの普及などで、都市住民の働き方を大きく変えています。
国は現在、インフラや地域交通整備の指針になる「社会資本整備重点計画」や「交通政策基本計画」を策定中で、2つのマスタープランにウィズコロナ時代の交通サービスのあり方を盛り込む意向です。現在はほぼ停止状態にある訪日外国人旅行の再開も絡んで、国交省は「ポストコロナ社会の地下鉄整備のあり方について検討が必要」とします。
東京メトロは有識者委で、完全民営化後の事業展開について、ノウハウを持つ企業と連携して、いわゆる関連事業を強化する姿勢を示していますが、紙数が尽きたため紹介は次の機会に回したいと思います。国交省は2021年7月の答申に向け、6月にも2回の有識者委開催を予定します。
文/写真:上里夏生