グランピングから温泉街再生まで JR西日本がウィズコロナの観光を追求 キーワードは宿泊業界との協業【コラム】
「瀬戸内はヨーロッパの湖を一つにしたほど美しい」
瀬戸内が日本を代表する観光スポットということの説明は不要でしょうが、はし休めとして、鉄道に関連する話題を少々。世界初の旅行会社を創業し、鉄道ファンには時刻表で知られるイギリス人のトマス・クックは明治の初め、団体客を引き連れて訪れた瀬戸内で、こう詠嘆したそうです。
「私はイングランド、スコットランド、アイルランド、スイス、イタリアの湖という湖のほぼすべてを訪れたが、ここ(瀬戸内海)はどれよりも素晴らしく、それら全部の良いところを集めて一つにしたほど美しい」。
話を戻して、JR西日本は瀬戸内エリアの活性化を目指す「せとうちパレットプロジェクト」で、新たな着地型体験観光のグランピングに着目。京阪神や首都圏方面から誘客して、交流人口の拡大を目指すことにしました。
クルーズ、夕陽鑑賞、フィッシング……
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実証実験は成功を収め、今回の施設オープンにつながったわけですが、実証期間中の食事へのこだわりをワンポイント。京料理研究家として知られる大原千鶴さんがメニューを監修、食材に地産品を使い、夕食はグランピングスタイルのバーベキュー、朝食は洋風ブレックファストを提供しました。観光メニューも瀬戸内の多島美を眺めるクルーズ、無人島での夕陽観賞、フィッシング、ビーチヨガと多彩です。
GWのプレオープン時はドームテント2基で運営し、最大12人(1テント当たり大人4人まで、乳幼児の添い寝で6人まで)が滞在できます。夏休みのグランドオープン時は、テント5基に増設する計画です。
屋外滞在のグランピングは、感染リスクが少なく、ウィズコロナ時代の新しい観光として期待を集めます。最寄駅は、JR瀬戸大橋線児島駅です。
グランピング施設にナローゲージの電車
せとうちグランピングが開業した鷲羽山下電ホテルは、下津井電鉄(下電)の系列ホテルです。下電は線路幅762ミリのナローゲージの電車として、ファンに知られていました。全盛時、JR瀬戸大橋線茶屋町―下津井間21.0キロの路線を運行しましたが、マイカーに押されて1991年に全廃されました。
下電ホテルの駐車場には、一部クラウドファンディングの資金も活用して移設された下電の車両が置かれ、会議やイベントに有料で貸し出してもらえるそう。鉄道ファンはグランピングより、こちらが気になるかもしれませんね。