オリンピック後の建設不況を地下鉄新線プロジェクトで底支えする?

新国立競技場=イメージ=(写真:shu / PIXTA)

ここから答申を深読みします。先述のように、復興庁の設置期限は本来なら2020年度まで。答申に盛り込まれた新線建設とメトロ株上場の方針は、本来ならもっと前に決まっても良かったはず。

一方で、復興庁の設置期限が10年後の2030年度に延びたので、新線整備やメトロ株売却の方針決定は、もっと後でも良かった気もします。一年前の今ごろ誰も知らなかった(認識していなかった)のに昨年末、東京都が国交省に検討を要請したのは、いささか唐突な気もします。

想像になりますが、メトロの新線プロジェクトが2021年のこの時期に決まったのは、東京オリンピック・パラリンピックが微妙に関係しているように思えます。東京五輪開催は、2013年の国際オリンピック委員会(IOC)総会で決まったわけで、そこからの日本の街づくりは五輪に向けてまっしぐら。オリンピックスタジアムの新国立競技場建設をはじめとする、巨大プロジェクトが次々に出現しました。

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折しも、コロナ前までの日本は、政府の観光立国政策が成果を挙げて外国人観光客が爆発的に増加。ホテルや国際会議場が不足するようになり、全国各地で施設整備が急ピッチで進みました。

ところが、新型コロナで情勢は一変。真偽は不明ながら、オリンピック後の日本は相当の不況に見舞われるとも噂されます。そうした世の中に、経済を下支えするのは公共事業。公共事業を所管するのは国交省で、道路関係では、コロナで若干の修正があるかもしれませんが、首都高速道路の日本橋付近を現在の高架から地下化する巨大プロジェクトが、五輪終了を待って始動するスケジュールです。日本橋付近の高速地下化は、概算事業費3200億円とも試算されます。

豊住線と品川新線の事業費は総額2500億円規模

これまで、鉄道には高速日本橋地下化のような大型プロジェクトがなかったのですが、今回2つの新線整備がほぼ決まったことで、鉄道にも対抗馬(とはもちろんいいませんが)ができました。

概算事業費は国の2018年度試算で豊住線1560億円、品川新線800億円。事業期間は最低でも10年程度は必要で、当面は経済を底支えする効果が期待できます。

もう一点、これは完全な想像ですが、今秋までに総選挙があります。これまでの選挙では、東京などの都市部で与野党双方が、有権者に届くような政策を打ち出せないでいました。

地下鉄新線が不要と思う方はあまりいないような気もしますが、いずれにしても本コラムで触れた四国、山陰、羽越・奥羽新幹線などと同様、例えば「地下鉄か福祉か」が選挙の論点の一つになる可能性もあります。