JRが自社でBRTを運行する

沿線自治体には「BRT転換すると、そのままJRが撤退してしまうのでは」の不安もありました。JR東日本は、「JRがバス専用道を確保し、責任を持って輸送サービスを継続します」「JRがバス事業の許可を受け、簡単に撤退できないようにします」と約束しました。振り返れば国鉄時代末期、国鉄は多くの地方交通線をバス転換しましたが、その際は代行バスを地元に任せたため、一部自治体には「JRはBRTをやめてしまう」の懸念があったのです。

JRの考え方に沿線自治体も共感し、気仙沼線は2012年末までにBRTでの本運行に移行。大船渡線も、震災から2年を経過した2013年3月にBRT運行が始まりました。

BRTのメリットとして、まちづくりに合わせて柔軟にルート変更できる点が挙げられます。気仙沼線BRTの志津川駅は、「南三陸さんさん商店街」に開設。2017年3月、商店街が仮設店舗から本店舗に移転すると駅も移設され、観光客の来店を便利にしました。

運行本数は大幅増

専用道を走る気仙沼・大船渡線BRT。単線の線路は当たり前ですが、バスも〝単線〟というのがポイントです(画像:「鉄道工学シンポジウム」の発表から)

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JR東日本はBRT運行に当たり、ダイヤ改正して運転本数を大幅に増やしました。鉄道時代、気仙沼線本吉―気仙沼間だけが1日22本(平日の上下計)で、ほかの区間は1日19本でしたが、BRTは本吉―気仙沼間は3倍近い1日65本に増発。他区間も29~53本に増やしました。

定時性に関しては、JR東日本がシンポで実証データを示しました。震災前、気仙沼線柳津―気仙沼間は鉄道で1時間30分掛かっていました。震災後の振替バスは2時間で、所要は30分伸びましたが、専用道を走るBRTは1時間40分に短縮。鉄道に比べ10分伸びたものの、ほぼ同等の定時性を維持します。

時に遅れはあるものの、9割以上は5分以内。生活交通や高校生の通学手段として、十分な機能を維持します。

JR東日本の資料に一般駅舎(BRT駅)の紹介があったので、転載しましょう。

十分な設備を持つ一般駅舎=大船渡線小友駅=(画像:「鉄道工学シンポジウム」の発表から)

鉄道とバスが接続する柳津、気仙沼、盛の3駅では、ホームの片側に鉄道、反対側にバスを着けて、階段などの上下移動なしで相互に乗り継げます。

山田線は鉄道で復旧し三鉄に移管

ここまでBRTのメリットを紹介しましたが、もちろん「鉄道がなくなる」ことに抵抗感を持つ沿線自治体もあります。三陸鉄道(三鉄)の南リアス線と北リアス線に挟まれたJR山田線。地元は、鉄道復旧を前提としたまちづくりを進めていることなどを理由にBRT復旧に難色を示し、JRは自社で鉄道を復旧させ三鉄に移管する手法で、2019年3月に運行再開しました。

JR東日本はこれらを総合して、大規模自然災害時の対応として「地元のまちづくり計画に対応できる点、輸送サービスを向上できる点などで、鉄道よりBRTが有効なケースもある。復旧したBRTの利用状況は今後も検証が必要で、JR東日本は、気仙沼・大船渡線BRTの経験を蓄積したい」と結論付けました。

JR九州は日田彦山線をBRTで復旧

気仙沼・大船渡線BRTでは、2018年度から自動運転バスを実証実験。2021年初には、JR東日本による大型自動運転バス製作のニュースも発信されました。自動運転バスは「レベル3(条件付き自動運転)」相当とし、運転手がハンドルから手を離した状態での最高時速60キロ運転を目指します。

JR東日本以外では、JR九州が2017年7月の豪雨で被災した福岡・大分県の日田彦山線をBRTで復旧します。計画によると、添田―彦山間(約7.7キロ)と宝珠山―夜明間(約7.4キロ)は一般道を利用。中間の彦山―宝珠山間(約14.1キロ)は線路跡に専用道を整備する方針で、2023年度の完成を目指します。