成澤由浩シェフ監修、コースメニューの魅力

沿線の景観を楽しむだけなら「ゆふいんの森」や普通列車でも構いませんが、「或る列車」に乗車するからには、やはり特別なお料理を堪能したいところ。「或る列車」の料理を監修するのは、これまでの「スイーツコース」同様、東京・南青山の名店”NARISAWA”オーナーシェフ成澤由浩氏。ここから先は試乗会で提供されたコースメニューをご覧ください。(※コースメニューは季節に応じて変更予定です)

ドリンクメニューでは九州産のお酒やジュース類を提供
4種のお水飲み比べセットも。下に敷かれた「久大本線沿線のお水味わいマップ」表面には甘みや口当たりについて記載があり、裏面では産地などが紹介されている。
<前菜>「熊本県 車海老と佐賀県 みつせ鶏のカクテルサラダ 鹿児島県 樽熟黒酢の香り」 色鮮やかなミニトマトやラディッシュ、コンソメのジュレ、黒酢のサラダが見目鮮やか
<スープ>「大分県 サワラ、ヒオウギ貝、ムール貝の鹿児島県 枕崎の鰹節出汁仕立て 宮崎県 NARISAWAキャビアとともに」 いただく前に鰹節の出汁をかけてもらう。鉄道ファンの中には「おだし列車」を思い出す方もいる……かも?
<メイン>「九州黒毛和牛のイチボのステーキ、福岡県 木の子とカラフルな野菜たち」 冬野菜のソースは上品で甘みがあり、お肉につけるだけでなくパンに塗っても美味しい
<スイーツ>「熊本県 やまえ栗の阿蘇山と鹿児島県 シングルモルトウイスキーの雲海」 モンブランを阿蘇山に、ジンを使用した泡を雲海に見立てた。周りの葉は紫いも、かぼちゃ、さつまいもでできており、全て食べられる
<ミニスイーツ>「佐賀県 温州みかんのタルト 福岡県 りんご飴、鹿児島県 カルヴァドスの香り 福岡県 玄米茶とチョコレートの松ぼっくり」 飴細工の中にはりんごジュースのピューレやブランデーのカクテルが入っている

必ずお腹を空かせて乗ってください。そう念押ししたくなる逸品揃いでした。

走行する列車内でコース料理を提供するというのは簡単なことではありません。越えなければならないハードルは多く、たとえば電気量の問題から使用できる調理器具は限られますし、列車の「揺れ」に対応するために重めの食器を使うといった細かな工夫も必要になります。

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それでも「提供する料理に妥協はない」「(JR九州から打診されて)率直な感想としては嬉しかった。九州の生産者さんや漁師さんの食材をこれまで以上に幅広く使える」と成澤シェフは語ります。「或る列車」ではこれまでもしっかりとしたお弁当を提供していた実績がありますし、調理スタッフも精鋭揃い。車内キッチンの設計にも成澤シェフが関わっており、コース料理を振る舞う上での不安はないそうです。

「或る列車」のメニューを監修する”NARISAWA”オーナーシェフ成澤由浩氏

列車での食事の醍醐味は「車窓から見える風景」だという成澤シェフ。移り変わる景色の中で食事をするのは街中のレストランではできません。車窓に映る景色の中で作られた食材、その季節に畑にあるもの、海で獲れるものが食材としてお皿の上に並ぶ……「或る列車」は目だけではなく、舌でもしっかりと九州を味わい尽くせる、そんな観光列車なのです。

記事:一橋正浩