列車内で発生する傷害事件への備え、危機管理情報共有システムの活用

以上で地震などの大規模災害を想定した所定の訓練は終わり。ですが、今回は車内設備(車内非常通報装置、ドアコック、消火器)などの社員に向けた再周知も行われました。小田急線や京王線車両内で本年発生した傷害事件を踏まえたものです。

訓練終了後、踏切支障報知装置を実際に押す様子

また今回の訓練では、2018年から導入された「クロノロジー型 危機管理情報共有システム 災害ネット(クロノロ)」という危機管理情報共有システムも使用されました。

これは車掌や運転士の持つタブレットを使用し、現場の情報を「テキストと画像を組み合わせて」報告が可能。情報をサーバ側で一元化することで、リアルタイムの情報を多数の関係者が客観的に、かつ時系列に沿って共有できるようにするというものです。

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従来の電話やメール等では情報伝達内容に齟齬が生じたり、意思決定が遅れるなどの課題がありましたが、クロノロの併用によりそのあたりもスムーズに。従来の災害対応のみならず、昨今の事件や世相を踏まえた情報共有や技術活用によるアップデートも欠かさない。そんな姿勢が垣間見える「総合復旧訓練」でした。最後に喜多村樹美男 代表取締役社長の講評から一部抜粋し、本記事を締めくくりたいと思います。

「日頃の真面目な仕事ぶりが伺いしれるようで、大変頼もしく思いました。(中略)事故が起こる際は好条件とは限りません。悪天候の中、深夜早朝、また大きな地震の後の余震が度々続くなかで活動しなければならないということもありますので、シナリオ通りというわけにはいかないでしょう。しかしながら、シナリオを作ってそれぞれが持ち場持ち場で何をしなければならないかということをやってみるのは、大変意義のあることだと思います。何を一番大事にしなければならないのか、何を伝えないといけないのか、そういったことが分かっていれば、シナリオ通りいかなくても大事なことはきちんと守れると思います」

記事:一橋正浩