お披露目されたC11 123号機

2021年12月24日、東武南栗橋車両管区 SL検修庫でC11 123号機のお披露目ならびに「火入れ式」が行われました。

序幕の瞬間

「火入れ式」とは、車体組み上げ後に初めてボイラーへの「火入れ」を行う安全祈願のための神事です。鷲宮神社神職が「祝詞奏上」などを執り行い、東武鉄道 根津嘉澄 取締役社長による「点火之儀」、東武鉄道運輸部南栗橋乗務管区 須藤和男 下今市機関区長による「投炭之儀」と進んでいきました。

C11 123号機 火入れ式 式次第
「点火之儀」の様子(写真提供:東武鉄道)
「投炭之儀」の様子(写真提供:東武鉄道)

根津社長は火入れ式の挨拶でC11 123号機の来歴に触れ、SL3機体制が整うことで将来的には「日光・鬼怒川エリア以外にもSLを使った観光振興を考えている」と話し、会津方面への乗り入れについても言及しました。

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火入れ式を済ませたC11 123号機は、今後各種試験や調整作業を行い、2022年春に運行を開始する予定です。東武鉄道はSL3機体制を整えることで、もし現在運行中のC11 207号機やC11 325号機が長期間の検査に入っても、年間通じてSLによる安定輸送が提供できるようになるとしています。

C11 123号機、復元の苦労も

今回お披露目されたC11は1947年に江若鉄道が発注し、日本車輌製造が製造した車両です。雄別炭礦鉄道、釧路開発埠頭で活躍したのち、1975年に廃車となりました。

東武鉄道は静態保存されていたC11を譲受し、2019年に復元作業を開始。本来の予定では2020年冬に完了する予定でしたが、新型コロナウイルス禍による影響などで1年後ろ倒しすることになりました。

復元作業について語る復元チーム倉持直樹サブリーダー

今回のC11は後期に製造された4次型で、東武鉄道が所持していた国鉄時代のC11の図面通りにはいきませんでした。復元チームの倉持直樹サブリーダー曰く「大本は同じでも、細部に違いがある。現物と図面を照らし合わせて初めて分かった点がたくさんあった」とのことで、せっかく作った部品がうまく組み合わせられないこともあったそうです。復元にあたって修理した部品は何百点にも上ります。

また、復元チームはJRのOB6名が指導する予定でしたが、その主要メンバー2名が復元作業開始前後に亡くなられています。倉持サブリーダーによれば、これは「航海にたとえるなら、すぐに船長と一等航海士がいなくなってしまったようなもの」。そうした困難を乗り越えて火入れ式を迎えたことに「やっとここまでこれた」とは感じつつも「今後の試験もあり、まだ気は緩められない」と語りました。

記事:一橋正浩(写真は一部を除き筆者撮影)