顧客との接点をスマホによるデジタルにシフト

ロープウェイ終点の桃源台からは、海賊船で箱根町港または元箱根港に湖上散策するのが一般コースですが、今回はもう一つ目的があったので、行程を変更して箱根登山バスで箱根湯本に直行しました。バスが通ったのは、いわゆる箱根駅伝の山下りルート。所要時間約40分です。

ここで、箱根観光型MaaSをもう一度おさらい。小田急電鉄が2021年4月に策定したグループ経営ビジョン「UPDATE(アップデート)小田急」では、観光型MaaSの狙いを「顧客接点をスマートフォンなどによるデジタルにシフトさせ、MaaSを通じた地域の活性化、新しい価値の提案を行う(大意)」とします。

グループ経営ビジョン「UPDATE小田急」で提示したMaaS戦略のイメージ。箱根以外では江ノ電のシェアサイクル事業もMaaSの対象です(資料:小田急電鉄)

鉄道事業者は、駅や列車というリアルな(現実の)顧客との接点があるので、そこを起点に情報発信しますが、現代はデジタルの時代。リアルな接点を大切にしながら、デジタルで日本国内、そして世界へ沿線の魅力を発信する。「100年に一度のモビリティ(移動)革命」と称される変革期にあって、日本の小田急から「世界の小田急」に躍進するのが、究極の企業目標といえそうです。

小田急と日本旅行がMaaS連携

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観光型MaaSを仲立ちにした観光・旅行業界との協業では、小田急と日本旅行(日旅)のMaaS連携が2021年11月に発表されています。日旅のツアーサイトでは、小田急の箱根フリーパス(現地用、2日間有効、大人用)付き旅行商品を販売します。

小田急と日本旅行のMaaS連携イメージ。箱根登山鉄道、箱根登山ケーブルカー、箱根ロープウェイ、箱根登山バスと、本コラムで紹介した乗り物の画像で箱根周遊をアピールします(資料:日本旅行)

日旅は全国ベースの総合旅行会社、親会社はJR西日本で関西エリアに強い事業基盤を持ちます。箱根は首都圏発の観光客が多いのですが、日旅の力で集客エリアを関西圏にも広げるのが連携の狙い。新幹線の乗車券・特急券と小田急グループの「デジタル箱根フリーパス」をセットにした旅行商品で、関西圏から小田原まで東海道新幹線、そこから箱根登山鉄道に乗り換えて箱根湯本や芦ノ湖に向かう観光ルートを定着させます。販売期間は2022年3月31日までです。