目標は「地下鉄を核にした生活まちづくり企業」 民営化4周年迎える大阪メトロの戦略は MaaSでワクワクする大阪を【コラム】
Osaka Metroのすべてが分かる一冊
ラストは本稿と併読していただるような、Osaka Metroのガイドブックを紹介しましょう。交通新聞新書として2021年6月に出版された『そうだったのか! Osaka Metro』がおすすめの一冊です。
鉄道ライター・カメラマンの伊原薫さんが、大阪の地下鉄の過去・現在・未来を紹介。歴史では、1903年の大阪市電誕生に始まり、大阪名物だった最初期の「2階付電車」(この写真はなかなかインパクトがあります)、大正時代にキタ(梅田)とミナミ(難波)を結ぶ大量輸送機関として構想された市営地下鉄、最初の地下鉄は1両編成だったにもかかわらずホーム長は8両対応の180メートルもあったことなど、〝眼からうろこ〟のこぼれ話が満載です。
本コラム的に注目なのは、大阪市交通局がOsaka Metroに生まれ変わるまで。先輩といえる国鉄の分割民営化は、巨額にのぼった赤字を棚上げし、新生JRになって地域密着の経営を実践する狙いでしたが、大阪市交通局の地下鉄事業は2003年度から単年度黒字、2010年度には累積欠損も解消して、経営的には順調でした。
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ただ、公営ビジネスは駅ビルなどの関連事業に制約も多く、自由な経営環境を求めて民間企業への転換を決断したそう。しかし、完全民営化には一部異論もあり、2007年前後にはいったん議論が凍結されるなど紆余曲折もありました。こうした経過は全国的にほとんど知られておらず、私も本書ではじめて知る話が多くありました。本書は気軽に読める新書版で、こぼれ話のコラムも満載。発刊が2021年6月なので、コロナの影響も記されています。
最後にクイズを2題。
第1問「Osaka Metroの列車が走るのに、Osaka Metroのものでない路線があります。それはどこ?」(ヒント。北大阪急行線など相互直通運転する路線ではありません)
第2問 「Osaka Metroには、終点の1駅手前止まりの列車が一定数あります。それはなぜ?」
気になった方、よろしければ本書でご確認ください。
記事:上里夏生