揺れの低減、座り心地の改善、つり革の増備……

つり革の高さは3パターンで、乗降口付近は頭をぶつけないよう最も高い位置に設置されている

一般利用者目線で気になるのは、車両の揺れや座席の座り心地といった快適性や使いやすさです。

315系では今年7月にデビューする新型特急「HC85系」と同じ、溶接個所を削減した台車構造(JR東海と日本車輌製造の共同開発)を採用。また、軸ばねの柔らかさを上下・左右・前後ごとに調整できる仕様とし、上下のばねを柔らかめに、前後のばねを固めにすることで走行安定性と乗り心地を両立しています。振動は211系と比べて3dBほど低減したそうです。

座席は背もたれが腰部の負担が少ない理想的な姿勢をサポート形状になっており、座席幅も1cm拡大したことで座り心地が向上。実際に座ってみると固さを感じることもなく、ちょっと上質なゲーミングチェアに座っているような気分になります。

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混雑時、座れないときも安心して利用できるよう、つり革や手すりを増備しています。つり革の数は同社の車両としては最多だそうで、同じ中間車両で比較すると、211系の128箇所から157箇所と約2割ほど増えました。またつり革の高さも従来は180cm・170cmの二通りでしたが、315系ではさらに160cmのものを追加しています。

案内表示器もカラーユニバーサルデザインに対応したフルカラー液晶ディスプレイに。これはJR東海の在来線車両としては初めてで、1両ごとに6台設置し、ドア開閉方向や到着駅の設備案内、最新の運行情報等を表示します。

また、ベビーカーや車いすの利用者にとってはありがたい点として、車両とホームの段差が縮小が挙げられます。車両床面の高さを下げ、乗降口の床面をホーム側に傾斜させることで、211系比で5cm縮小しています。

ホームとの段差を縮小することで、ベビーカーや車いす利用者も乗りやすくなりました

他にもトイレの設置(全編成に1箇所)や車内セキュリティの強化(車内防犯カメラの設置)、冷房機能向上(AIによる自動学習・制御最適化、国内初)など、快適性や安心・安全といった面でも洗練されており、現代の最新通勤電車が備えるべき機能を網羅した「居心地の良い車両」と感じました。

安全面に関して追記すると、2022年夏以降は非常走行用蓄電装置も備え、変電所の事故や自然災害時でも、乗客が線路に降りることなく安全な場所まで走行できるようになります(第7編成までは別途改造して搭載、第8編成以降は新造時から搭載)。

今年は「315系」「HC85系」とJR東海の新型車両が矢継ぎ早にデビューします。役割は違えど設計には共通する部分もあり、まずは今春の315系に期待がかかります。

記事:一橋正浩