「女流名人という偉大な歴史に自分の名前を刻めて、いまうれしく思っています。

女流棋士としてタイトル挑戦は8度、重ねてきました。タイトル獲得には手が届かないまま、このまま自分にはタイトルのない人生なのかと思うときもありました。

今回の「岡田美術館杯 女流名人戦 五番勝負」が、最後のタイトル戦かもしれないという思いで臨みました。

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その強い思いと、支えてくださった人たちのおかげでタイトル獲得ができたと思っています。これからは防衛戦を挑みます。ますます精進していきたいと思います」

―――彼女はあふれる涙をこらえながら、そう伝えて女流名人就位状を手にした。

逆境を乗り越え、熱戦を重ね、伊藤沙恵 女流名人 誕生!

2022年1月から2月にかけて開催された「第48期 岡田美術館杯 女流名人戦 五番勝負」では、驚異の13連覇をかけた里見香奈女流名人と、初タイトルを狙う伊藤沙恵女流三段が対局。

伊藤沙恵女流三段が、女流棋戦 最多連覇記録保持者 里見香奈女流名人に3勝1敗で勝利し、女流名人を獲得。史上最多となる9度目のタイトル挑戦で、悲願を達成した。

女流名人戦は、女流棋士の誕生とともにスタートした最も古い歴史と伝統のある棋戦。今期の五番勝負では、現在の女流棋界をリードする2人による注目の対局となり、箱根・岡田美術館を舞台とする第1局から、各地で激戦が繰り広げられた。

岡田美術館 小林忠 館長「お正月の箱根で、伊藤沙恵 女流名人をお迎えできることを楽しみに」

4月15日、ザ・プリンスパークタワー東京で開かれた就位式・祝賀会には、伊藤沙恵 女流名人をはじめ、日本将棋連盟 佐藤康光 会長 九段、清水市代 常務理事 女流七段、鈴木大介 常務理事 九段、西尾明 常務理事 九段、屋敷 伸之 九段、室谷由紀 女流三段、石本さくら 女流二段、岡田美術館 小林忠 館長、報知新聞社 依田裕彦 代表取締役社長、同 丸山伸一 代表取締役会長らが駆けつけ、新たな女流名人誕生を祝った。

岡田美術館 小林忠 館長は、「42期から岡田美術館杯として、その第一局を箱根の岡田美術館で行ってきた。これまで、どなたが里見香奈女流名人の牙城を打ち破れるか、かたずをのんで見守ってきた」と伝え、こう続けた。

「前夜祭では、伊藤沙恵さんが対局にかける熱い思いを語り、過去2度の挑戦とは違う、覚悟を持ってこの女流名人戦に挑んでいると感じました。初タイトル獲得へ向ける熱意こそが、栄えある勝利を呼び寄せたと感じました。

「来年の第49期 岡田美術館杯は、初のタイトル防衛という、挑戦者と異なるプレッシャーがあると思います。お正月の箱根で、勝機を重ねた伊藤沙恵 女流名人をお迎えできることを楽しみにお待ちしています」

室谷由紀 女流三段「百折不撓の精神を学びました」

また、祝賀会に駆けつけた室谷由紀 女流三段、石本さくら 女流二段も、伊藤沙恵 女流名人誕生をこう祝福した。

「タイトル戦 9度目の挑戦での見事に獲得、沙恵さんのあきらめない気持ち、百折不撓(ひゃくせつふとう)の精神を学びました。苦しい時期もあったけど、頂きに立った沙恵さんを、心から尊敬しています。きょうこの日は、おめでとうと伝えたいです」(室谷由紀 女流三段)

「わたしは第4局に記録係を努めて、伊藤さんのタイトル戦を間近にみている側でした。今回こそは、タイトルを獲るんじゃないかと、そんな雰囲気を見ていて感じました。女流ABEMAトーナメントでいっしょに戦った仲としても、うれしいです」

―――伊藤沙恵 女流名人がここに誕生し、女流タイトル保持者はこれで4名に。ますますヒートアップする女流棋士界。今後の熱戦にも注目が集まる。

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