移動や生活サービスをシームレスにつなぐ

Osaka Metroを含む関西の鉄道事業者は、大阪・関西万博をきっかけに、さらなる輸送サービスのレベルアップをめざします。各社共通のキーワードが「MaaS」。交通の総合情報基盤を構築、ダイヤや観光情報の検索と乗車券などの購入、決済(支払い)をスマートフォン1台で完結できるようにして、万博のレガシー(遺産)にする構想です。各社を代表して、JR西日本を取り上げます。

MaaSの実践策として2023年のサービス開始を予定するJR西日本の「モバイルICOCA」=イメージ=(資料:JR西日本)

JR西日本は、MaaSを「さまざまな移動・生活サービスを、シームレスにつなぐ最重要な経営課題」と位置づけます。行政や企業などと力をあわせ、地域実態に応じたMaaSの早期サービス開始を志向します。エリア別では、「都市型MaaS」「観光型MaaS」「地方型MaaS」の3方向から、それぞれの特性に応じたサービスのあり方を探ります。

都市型MaaS実践の舞台が大阪・関西万博。JR西日本はOsaka Metro、近畿日本鉄道(現在は近鉄グループホールディングス)、京阪ホールディングス、南海電気鉄道、阪急電鉄、阪神電気鉄道の鉄道6社とともに2019年10月に立ち上げた「関西MaaS検討会」で情報交換しながら、有用なMaaSを構築します。

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検討会の活動では、初年度の2019年度にMaaSのメリットを整理し、関西圏全体として取り組むべき戦略を確認。2020年度にMaaSビジョンを示しました。

目標は、「関西圏で最もユーザーに支持されるMaaSの開発」。理想に「一般客が使いやすく、事業者が参加しやすく、将来的に成長・発展するMaaS」を掲げます。2022年度は、早期にシステム開発に着手する方針です。

万博会場近隣で一足早く自動運転車の実証実験

2022年4~6月の実証実験で大阪市此花区を走る自動運転バス。技術的には「レベル4を見据えた次世代の交通管制システム」。レベル4は完全自動運転ですが、日本では公道走行は認められないため実際にはオペレーターが乗車するスタイルで運転されました(写真:Osaka Metro)

ラストはOsaka Metroに戻って、万博で構想される自動運転車の話題。同社を代表企業とする民間10社は共同で、万博でのお披露目をめざします。参加企業はOsaka Metroのほか、あいおいニッセイ同和損害保険、NTTドコモ、大林組、関西電力、ダイヘン、凸版印刷、日本信号、パナソニック、BOLDLY(ボードリー)の各社。BOLDLYはソフトバンクグループで、自動運転システムを開発します。

Osaka Metroなどは2022年3月1日から4月26日の約2カ月間、自動運転車の実証実験を大阪で実施。メトロ中央線コスモスクエア駅と人工島・舞洲(まいしま)の間を、完全自動運転のレベル4を見据えたBOLDLYのバスが結び、体験モニターに応募した一般市民が、一足早く未来の交通を体験しました。

記事:上里夏生