埼玉県深谷市にキャンパスを構える埼玉工業大学が、自動運転技術開発分野でまた一歩、大きく前進―――。

埼玉工業大学内に研究拠点をおく自動運転技術開発センターの自動運転バス2台が、2021年度(2021年4月~2022年3月末)自動運転の走行距離合計が、1万1229㎞ に達した。

2021年度では、前年度・2020年度の2970㎞から、約3.7倍と大幅に距離をのばし、年間走行距離が初めて1万kmを超え、東京〜福岡を5往復した距離に相当するまで走ってきた。

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埼玉工業大学の自動運転バスは、自動運転OS「Autoware」をベースとし、同大学が独自開発したソフトウエア「SAIKOカーWare」を搭載。

AI技術を積極的に採用し、システムによる自動運転と、ドライバーによる運転が、即時にスムーズに切替えでき、交通の状況に応じて安全に一般公道を法定速度で走行できる点が特長。

既存のバス車両に後付け自動運転AIシステムを搭載して走らせるというフレキシブル性・汎用性にも優れ、全国各地の路線バス業界がその進化に注目している。

国内の大学が開発する自動運転バスのなかで、最長級の走行距離を記録

埼玉工業大学では、路線バスタイプの日野 レインボーIIと、小型バスタイプの日野 リエッセ II をベースとした自動運転バス2台体制の研究・開発で、このコロナ禍でも各種の実証実験に参加。自動運転走行距離をのばしてきた。

とくに、距離が大きく増加したのは、深谷観光バスと連携した路線バス事業への参画。

NHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公ゆかりの地を巡る「渋沢栄一 論語の里 循環バス」(総計9531.501km)によるもの。

一般乗合旅客自動車運送事業(路線バス)の緑ナンバーを取得し、ほぼ1年間をかけて継続的な営業運行を展開し、路線のコース内の自動運転区間を最大26kmへ拡大して走ってきたことが大きい。

さらに、埼玉県外の自治体の自動運転に協力し、栃木県茂木町と千葉幕張新都心の実証実験に参加(総計1120.382km)。自動運転バスを開発して3年目で、これまでに関東地方1都5県で各種の実証実験を重ね、各地の公道を自動で走破してきた。

陸上での自動運転技術の経験を水上へ転用する世界初のチャレンジにも成功

「埼玉県スマートモビリティ実証補助金」に2年連続で採択され、“生きる教材”として学生たちと自動運転実現へむけた研究・開発を続ける埼玉工業大学。

この開発チームを率いる埼玉工業大学 工学部情報システム学科 渡部大志教授(埼玉工業大学自動運転技術開発センター長)は、「年間1万kmを超える長距離の走行を実現できたのは、関係府省庁、関係自治体、関係機関、関係各社、そして深谷市と近隣の住民の人たちの温かい支援・協力によるもの」と伝え、こう続けた。

「埼玉工業大学は、2017年12月から地元・深谷市内の公道で実証実験を開始。2019年8月にマイクロバス自動運転バスを開発し、全国各地での各種自動運転の実証実験に積極的に参加。自動運転バス実現にむけて経験とノウハウを積み重ねてきた」

「その経験を活かし、大型自動運転バスを開発して、業務用の緑ナンバーも取得し、深谷観光バスとの協力により、乗客を乗せて公道での自動運転を長期間実施した経験を重ねてきた」

「さらに、日本財団の『水陸両用無人運転技術の開発 ~八ッ場スマートモビリティ~』プロジェクトにも参加し、コンソーシアムのメンバーとの共同開発により、陸上での自動運転技術の経験を水上へ転用する世界初のチャレンジにも成功」

「今後も自動運転の実用化にむけ、各地域の社会実装課題に対して、産官学の協力による課題解決に、取り組んでいきたい」

◆埼工大 自動運転特設サイト
https://saikocar.sit.ac.jp/

◆埼工大 世界初の水陸両用船の無人運転・運航技術の開発に成功
https://www.sit.ac.jp/media/yanbareport.pdf

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