北陸新幹線福井駅北側に新工法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)

えちぜん鉄道(左)と在来線のJR北陸線(右)にはさまれた北陸新幹線「福井開発高架橋」(画像:土木学会)

続いては、2023年度末開業をめざして建設中の北陸新幹線金沢―敦賀間の福井駅付近で採用された「フルプレキャストラーメン高架橋の建設」。JRTT北陸新幹線建設局と大林組が共同受賞しました。

新工法が採用されたのは、福井駅北側(金沢寄り)の「福井開発高架橋」。新幹線で開発というと当然「新幹線で地域開発」と想像しますが、本当の読みは「かいほつ」。福井市内の地名です。高架橋区間は約2.3キロにおよび、工期や用地上の制約で、整備新幹線の高架橋初のフルプレキャスト工法で建設されました。

工場で部材を造り現地で組み立てる

少々専門的になりますが、新工法のキモが「フルプレキャスト」。現地でコンクリートを流して構造物を造るのでなく、あらかじめ工場で部材を造り、現場に搬入して組み立てる工法です。

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新工法のメリット――。JRTTによると、現場でコンクリートを流し込む場所打ち工法に比べ、労働生産性は大幅に向上。工期も従来工法試算の231日間から、フルプレキャストでは78日間と大幅に短縮されました。

運休期間を当初予想より3カ月間短縮・箱根登山鉄道

復旧された箱根登山鉄道蛇骨陸橋。橋脚と橋りょうは完全な新製で、従来の3脚から2脚に変更。線路上部には土砂崩れを防ぐネットが張られています(画像:土木学会)

3件目は、箱根登山鉄道が神奈川県県土整備、環境農政の県政2局、清水建設、西松建設と共同受賞した「官民協力による箱根登山鉄道の早期復活プロジェクト」です。

箱根登山鉄道は2019年10月12日の台風19号の集中豪雨で、橋りょうが流失するなど大きな被害を受けました。神奈川県箱根町の当日の降水量は全国1位を記録。登山鉄道は沿線21ヵ所で被災しました。

しかし、登山鉄道と県の関係2局、建設2社の共同プロジェクトは工法を工夫。被災から286日目の2020年7月23日に全面復旧し、当初予想された運休期間1年間、2020年秋運転再開のスケジュールを約3カ月間も前倒ししました。

線路を道路に転用して機材や資材を搬入

最大の被害を受けたのは、宮ノ下―小涌谷間の蛇骨(じゃこつ)陸橋。線路わきののり面が大規模に崩壊し、橋脚と橋りょうが流失しました。

蛇骨陸橋は斜面上部が県環境農政局、下部が県土整備局と担当が分かれます。急傾斜地で機材搬入は難しく、もちろん作業の安全も確保しなければなりません。現地は富士箱根伊豆国立公園内。コロナ対策も求められました。

そこで登山鉄道と県政2局は、歩調をそろえて災害復旧。登山鉄道の鉄道復旧、県環境農政局の斜面復旧、同じく県土整備局の護岸復旧を同時並行的に進めることで、工期短縮を実現しました。

なかでも工夫したのが、工事用機材や資材の搬入路確保です。登山鉄道の線路をいったん撤去。マクラギを残したままシートでおおって仮舗装、降雪期の冬季も作業を続行できるようにして、早期復旧につなげました。