可動式ホーム柵と浸水対策

次に、京都市営地下鉄の安全・安心、利便性向上策を順不同で。

烏丸線では、利用客が多く混雑する駅に、可動式ホーム柵を整備しています。これまでに導入を終えたのは京都、四条、烏丸御池の3駅。2022年度は北大路駅に整備します。なお、東西線は全駅にホームドアを設置しています。

地下鉄駅の浸水対策も万全です。2016年度から2019年度までの4年間で、12駅31カ所の駅出入り口に浸水対策を完了しています。2018年5月にはハザードマップが公表されており、2023年度までに8駅16カ所に追加整備します。

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観光客利用の多い京都で、外国人に喜ばれそうなのが駅トイレのリニューアル。京都市交通局は開業から30年が経過したトイレについて、全面リニューアルを進めています。リニューアルにあわせ、段差の解消、トイレの洋式化やオストメイト設備を導入して、バリアフリー化を図ります。女子トイレには、パウダーコーナーも設置しています。

エキナカショップで増収作戦

コロナで収入が落ち込むなかでは、関連事業による増収も求められます。いわゆるエキナカビジネスの強化は鉄道事業者に共通する経営課題ですが、地下鉄で難しいのは施設が地下なので、駅ビルをはじめとする商業スペースの確保が難しい点。

京都市交通局はエキナカショップ「コトチカ(古都の地下の意)」を2010年度から出店。2022年3月末現在、12駅47店舗にネットワークを広げています。今後も、新しい商業施設の可能性を探ります。

全国の鉄道事業者が力を入れる応援キャラクターを起用した利用促進作戦には、京都市営地下鉄も乗り出します。

都市交通局の応援キャラクターには、太秦萌のほか、松賀咲(まつがさき)や小野ミサ(おのみさ)も。若手職員が立ち上げたプロジェクトチームが、利用促進を目指して2011年に考案しました (c)京都市交通局2013-2022

ビジュアルなので余計な説明は不要でしょうが、「地下鉄に乗るっ」のキャラクターの多くが高校生や大学生というのは、いかにも名門大学や高校がある〝学問の都・京都〟らしさを感じさせます。

高校生キャラの太秦萌がマスク乗車や車内サイレントを呼び掛け

ラストは、京都市営地下鉄の新型コロナ感染拡大防止策。対策は①車両、駅トイレ、券売機・精算機の抗菌ウィルス加工 ②車内や駅の換気 ③駅や車両の定期消毒 ④アルコール消毒液の全駅設置 ⑤利用客への啓発活動――の5項目で、事業者の取り組みをアピールしつつ、利用客にも協力を求めます。

私が注目したのは、前章の利用促進作戦にも登場したキャラクター。「マスクをするっ」のキャッチフレーズで、「ご利用の際には、マスクを着用してね!」「車内・ホームでの会話はなるべく控え目に。」などと、地下鉄沿線に住む高校2年生という設定の太秦萌(もえ)が協力を呼び掛けます。

京都市交通局は2022年6月にも、「地下鉄烏丸線20系車両(第2編成)の営業運行の開始について」「市バス側面方向幕タオル(実寸大)を発売!」といったニュースを発信しました。国際観光都市を走る地下鉄として、40周年の節目をステップに、50周年から100周年へとさらなる進化を遂げることを期待しつつ、本コラムを終えます。

記事:上里夏生