只見線利用客数は1日370人

本コラムでも再々取り上げてきた点ですが、最近の鉄道事業者は地方ローカル線の経営指標を積極的に公表して、地元との話し合いを求めます。JR東日本の2010年度データで、只見線の利用客数は1日当たり370人。同社の在来線67線区のうち下から2番目にランクされます(最下位の岩泉線〈岩手県〉は2014年に廃止)。

国鉄民営化後の只見線の利用客数。確かに減少傾向が続きますが、観光客の利用などで激減はしていないように思えます(資料:JR東日本)

只見線の収支は、2009年度データで営業収益500万円に対し営業費3億3500万円で、3億2900万円の赤字。これだけ大きな赤字を計上すると、一般企業ならその製品は製造中止の可能性が高いわけですが、地域の移動インフラを受け持つJR東日本にすれば、自社都合で存続か廃止かは決められません。

JR東日本は、開示データをもとに福島県などと善後策を協議した結果、2017年6月に上下分離による鉄道としての復旧・存続が決まりました。

鉄道復旧後はJR東日本が2種、福島県が3種事業者に

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JR東日本と福島県の、「只見線(会津川口―只見間)の鉄道復旧に関する基本合意書及び覚書」の主な中身を確認します。JR東日本は、県と会津地方17市町村の要請に基づき、不通区間を鉄道で復旧します。

復旧後、鉄道施設などを県に無償譲渡。JR東日本は第2種鉄道事業者、福島県は第3種鉄道事業者の許可をそれぞれ国土交通大臣から受けます。

施設保有と列車運行主体を分ける経営の上下分離=イメージ=(資料:只見線利活用プロジェクトチームのリポート「只見線利活用計画」から)

福島県は、JR東日本に鉄道施設などの使用料を請求しますが、復旧区間の収支に欠損が生じないよう減免し、実質無償にします。簡単にいえば、只見線の全線運転再開でJR東日本に新たな負担が生じないよう支援します。

基本合意書の締結に当たり、福島県は「只見線は、地域の将来像を描く上で重要な存在。日本一のローカル線として、多くの方に利用される路線にしたい」(内堀雅雄知事)、JR東日本は「福島県外からも多くのお客さまを呼び込み、只見線をご利用いただける取り組みを地元と共同で進めていく」(深澤祐二社長)と、それぞれコメントしました。