留萌線の魅力を味わう

留萌線4景。(左上から時計回りに)留萌駅外観、ホームに止まる列車、ホームの駅名標と歓迎メッセージ、空から見た留萌駅=(画像:留萌市の地元向け説明会資料)

廃止までに半年の期間があるので、可能な方はぜひ、北海道紀行で〝留萌線ラストデイズ〟をご堪能ください。ここでは、バーチャル乗車で線区を紹介します。

基本は深川駅4番線を発車する留萌線列車、函館線札幌方面と並走した後、右方向にカーブをきって、北西に向かいます。

途中駅は終点の留萌を含めて11駅。5駅目の真布あたりまでは車窓に水田や畑、時おり住宅が広がります。来年4月以降、終端駅になる石狩沼田、元は2面2線で行き違いができましたが、現在は1線が取り外され、1面1線になっています。

テレビ小説「すずらん」に明日萌駅として登場した恵比島駅

ADVERTISEMENT

6駅目の恵比島は、1999年のNHK連続テレビ小説「すずらん」に架空の「明日萌(あしもい)駅」として登場。駅前にはオープンセットが組まれ、ロケツーリズムで多くの観光客が訪れたのも、今は懐かしい思い出です。

若干マニアックな話でいえば、テレビに登場したSLは茨城、栃木県の第三セクター・真岡鐵道から借り受けたC12 66でした。JR北海道は自社で2両のSL(C11 171とC11 207)を動態復元し、留萌線で2006年まで臨時快速「SLすずらん号」を運転しました。

SLすずらん号は、留萌線が最後に光輝いた期間だったかもしれません。JR北海道や沿線4市町の決断は重く受け止めたいと思いますが、留萌市はホッケ、カレイ、ウニなど海産物の宝庫。JR北海道にもう少し経営体力があれば、グルメ観光列車が人気を呼んだかもしれません。

行き違いできる峠下駅

真布からは山間地に入り、恵比島―峠下間には短い峠下トンネルも。峠下は留萌線で唯一、上下線列車が行き違いできる駅です。終点の留萌が近付くと地形は再び平地に戻り、車窓には住宅や倉庫、そして鉄道旅客減の一因とも指摘される高規格道路が広がります。

留萌は現在は留萌線の終端駅ですが、かつて増毛に線路が延び、国鉄時代は日本海沿いに宗谷線幌延にいたる支線の羽幌線(国鉄改革直前の1987年3月に廃止)もありました。

国鉄時代は急行も運行

留萌見晴公園に保存されているD61 3(写真:鉄道チャンネル編集部)

最後はファン目線での留萌線の魅力。留萌線は国鉄無煙化(観光SLは除く)の1975年直前までD51、D61などが走っていたようなので、ベテランファンにはドラフト音を追った方がいらっしゃるかもしれません。

現在の留萌線は国鉄時代の1986年から製作された一般気動車・キハ54が主力車両です。撮影ガイドには、「恵比島―峠下間、峠下トンネルを抜けた峠下側のカーブが撮影スポット」の記述も見つかりました。

1985年に発行された北海道の鉄道ガイドに、留萌線の列車編成表があったので、ご紹介します。急行「大雪2,3号」、「紋別」、「はぼろ」の併結列車で、運転区間は札幌―留萌・幌延・遠軽・網走間。旭川方先頭から、

キハ56+キハ27×2両+キロ26+キハ56×2両+キハ27×2両+キハ56+キハ27+キハ56+キハ27+キハ56

の堂々たる13両編成です。キハ27以下、後部の4両を深川で分割して留萌線に。先頭のキハ27を留萌で切り離し、キハ56+キハ27+キハ56の3両は前出の羽幌線を幌延に向かいます。

たとえ鉄道が廃止されても、活気ある沿線であることを願いながら、本コラムを終えます。

記事:上里夏生