大渋滞の原因はアイツだった!

オランダ坂トンネルを抜けたのは13時20~30分頃、いつの間にか天気も変わり、ぽつぽつと雨が窓ガラスを叩いていました。予定より2時間ほど遅れての長崎到着で、果たして午後の取材に間に合うやら……とぼんやり窓の外を眺めていると、突如その静寂を打ち破るような声が響きました。

「ブルーインパルスだッ!」

ハッと見上げると、確かに形も視認できないほどの小さな飛行機が曇り空というカンヴァスに白煙を描いていたのです。渋滞の原因はこれか!長時間バスに閉じ込められた乗客の雰囲気も一変し、我も我もと窓を見上げて喜びの声を上げていました。

そう、9月23日の西九州新幹線開業にあわせ、記念イベントの一環としてブルーインパルスが飛んだのです。前日の22日には予行演習も行われていたので頭の隅にはあったのですが、予想を遥かに上回る人気ぶりに目を瞠りました……歩道橋はブルーインパルスを見ようとする人であふれかえり、路面電車(長崎電気軌道)もなかなか前には進めていません。誰もが空を見上げているのです。

飛行時間はわずか20分ほどでしたが、車内の空気もブルーインパルス一色に変わり、これまでの静けさが嘘のような盛り上がり。まるでイベント中の観光バスのようでした。途中で降りる乗客は長時間戦い抜いた運転士に「お疲れさまでした」と声をかけており、大渋滞とブルーインパルスで謎の連帯感が育まれていたようです。

長崎駅に到着したのは14時過ぎで、諫早~長崎間を2時間半以上かける長い長い道のりでした。幸いにして式典の開始にはぎりぎり間に合ったのですが、長崎の混雑はその後も収まらず脱出が困難な状況に。筆者は夜まで駅前のコワーキングスペースにこもり、外の混雑ぶりを眺めながら原稿を書き、19時過ぎに指定席券を取って西九州新幹線「かもめ」で長崎を後にしました。諫早には9分で着きました。

余談ですが、今回バスでお隣になった諫早市の方に「いつもこんなに渋滞するんですかね」とお話を伺ったところ、「こんなことは滅多にないですよ!」「みんな大きなイベントに飢えていたんでしょうねぇ」と語られており、この日の熱狂ぶり・混雑ぶりは長崎でも歴史的なものだったのではないかと思われます。

余談ですが、渋滞中に確認した隣の車線のナンバープレートは、長崎ナンバーのほかに福岡ナンバーのものも多く、九州南部や中国地方の車もちらほら混じるといった状況でした。今後、こうした大規模なイベントで西九州新幹線が大量輸送の役目を果たせるかどうか、自家用車利用者が新幹線に移ることで道路の混雑状況は改善されるか、といった点が注目されます。

記事:一橋正浩