開業以来初めて運賃を引き下げた北総鉄道(写真:railway memory / PIXTA)

食品類だけで6000品目以上が値上げされるという2022年10月。鉄道業界にも運賃引き上げの波がしのび寄るが、そうした風潮の中、10月1日から運賃を全体平均で15.4%引き下げたのが、千葉県の北総鉄道だ。特に通学定期は平均値下げ率64.7%と、改定前の半額以下に設定した。

京成高砂で京成本線と接続する北総線は、京成高砂―印旛日本医大を結ぶ32.3キロ。これまでの運賃は、JRや大手私鉄の同一距離に比べて2~3倍に相当し、利用者や沿線自治体から値下げを求める声が相次いでいた。

そうした中で沿線開発が進んだほか、成田空港につながる「成田スカイアクセス線」開業などで利用者が増加。累積損失を2022年度内に解消できる見通しが立ち、値下げ可能な環境が整った。

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北総が自社判断で運賃を下げるのは、1979年の開業以来初めて。きっぷの場合、初乗り運賃は20円引き下げて190円になり、最大では100円値下げされる。大幅値下げの通学定期は、同じ距離のJRやほかの大手私鉄と比べ同一レベルまたはより低水準になった。

一方、同じ2022年10月1日から運賃を引き上げたのが神奈川県の箱根登山鉄道。運賃改定は1997年以来25年ぶりだ。

箱根登山鉄道線は小田原―強羅間の15.0キロ。同社は2019年10月の「令和元年東日本台風」で被災し、一部区間が約9ヵ月間にわたり不通に。復旧に多額の費用がかかったほか、新型コロナの影響で利用客が減少。経営を維持するため、約25年ぶりの運賃値上げを判断した。

値上げ額は20円から最大90円までで、平均10.9%。箱根登山鉄道は「将来にわたり、鉄道事業を健全に維持するため、運賃をコストに見合った水準に見直すことにご理解いただきたい」とコメントしている。

記事:上里夏生