昨年、地元PTが調査結果を公表(奥羽新幹線)

ここから米沢トンネルと奥羽新幹線に話題を移しますが、山形新幹線のままの表記は2つの新幹線が登場して分かりにくいので、〝本名〟の「奥羽線」を原則使用します。

奥羽新幹線は、福島―秋田間の265.6キロ。政府が1973年に基本計画を閣議決定したものの、その後約50年間にわたり目立った動きなしというのは、四国新幹線や山陰新幹線に共通します。

奥羽新幹線をめぐっては、早期着工を求める沿線自治体の「羽越・奥羽新幹線関係6県合同プロジェクトチーム(PT)」が2021年6月、初めての調査結果を公表しました。

奥羽新幹線のルートイメージ。秋田で同じく同じく構想段階の羽越新幹線に接続して青森(新青森)にいたります(資料:羽越・奥羽新幹線関係6県合同プロジェクトチーム)

ADVERTISEMENT

それによると、奥羽新幹線の主な経由地は県庁所在地の山形市。起点の駅部を共用すると仮定するとしても、既に建設済みなのは700メートル程度(福島駅付近と思われます)で、ほぼ全区間を新線として建設します。

新庄―大曲間を改軌すれば新幹線車両は走れますが……

奥羽新幹線の山形市以外の経由地は未定ですが、想定ルートを現在の奥羽線に重ねれば、福島―山形―新庄間148.8キロは山形新幹線として新幹線車両の走行が可能です。一方、北側の大曲―秋田間51.7キロは秋田新幹線として、こちらも新幹線車両が走れます。

理論的には、2つの新幹線に挟まれた新庄―大曲間98.4キロを新幹線規格の標準軌(1435ミリ)に改軌すれば、(東京)―福島―大曲―秋田のルートで一応新幹線車両は走れます。しかし、沿線自治体や経済界が望むのは、在来線とは別線のフル規格新幹線です。

今回の覚書には、当然ですが「奥羽新幹線」のフレーズは一切登場しません。それでも「時速200キロ超で走行可能」の米沢トンネルを、地元が「奥羽新幹線建設に向けた第一歩」ととらえることは容易に想像できます。

ちなみに、JR東日本は秋田県と2021年7月、秋田新幹線の新仙岩トンネル(赤渕―田沢湖間)整備計画の推進に関する覚書を締結。内容は今回の米沢トンネルとほぼ同趣旨で、JR東日本は山形、秋田の両新幹線でネック解消による輸送改善に取り組みます。

本コラムは、奥羽新幹線の必要性には言及しませんが、米沢トンネルが山形新幹線の線区改良ばかりでなく、将来の奥羽新幹線建設に向けた最初のステップという見方もできることは、意識しておいていいでしょう。

記事:上里夏生

<鉄道チャンネル 関連記事>
日本海沿いに富山と青森を結ぶ 羽越・奥羽新幹線とは? 地元による時間短縮効果などの試算まとまる【コラム】
https://tetsudo-ch.com/11596915.html