公共交通機関における「Visaのタッチ決済」取引件数は1年で38.1倍に

「Visa」の担当者によれば、公共交通における「Visaのタッチ決済」の普及は目覚ましく、その利用件数は2021年6月~2022年7月の約1年でおよそ38.1倍になったという。

2021年6月~2022年7月の「Visaのタッチ決済」の拡大(資料:Visa)

すでにある程度の利用があったスーパーマーケット(3.0倍)、ドラッグストア(5.0倍)、コンビニ(5.3倍)も同期間で数倍に伸びているとはいえ、この取引件数の増加具合は急速に導入が進んだ証左と言える。

日本の公共交通機関の車内で初めて「Visaのタッチ決済」を導入したのは茨城交通だ。同社の高速バス「勝田・東海―東京線」で導入した。2022年8月には、路線バス全車両約400台に各種キャッシュレス決済を導入すると発表している(導入予定時期は2023年12月頃)。

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大手鉄道事業者では南海電鉄が先行して2021年に実証実験を開始しており、今年からJR九州や西日本鉄道が追随するかたちになった。また西武鉄道や京急電鉄は鉄道ではなく一部のバス路線で導入している。

2021年6月~2022年10月の「Visaのタッチ決済」の拡大、日本の公共交通機関での導入状況(資料:Visa)

導入状況を図で見てみると、やはり空港路線の多さが目立つ。今はコロナ禍で下火だが、訪日外国人が交通系ICカードやきっぷを買わず、手持ちのカードで移動する、という使い方が想定されていることが分かる。

「外国人の方にいかに便利にスムーズにストレスなく鉄道を使っていただくか。これが大きな課題であると弊社も認識しております」(Visa担当者)

「南海電鉄様からも、以前は交通乗車券の払い戻しやご案内といったインバウンド対応に人員を割いていたという話をうかがっております。『Visaのタッチ決済』の導入で、インバウンドだけでなく事業者側の負担を削減し、キャッシュレス化に貢献するのも大きな目的の一つです」(同担当者)

導入のスピードには事業者によって濃淡がある。たとえば沖縄県で多くの事業者が導入しているのは、かねてより県を挙げてキャッシュレス化に取り組んでいるからだ。東北の太平洋側は「みちのりホールディングス」が導入に前向きだ。先に挙げた茨城交通もみちのりホールディングスのグループ会社である。

九州の新幹線沿いも導入が早い。「新幹線や空港がつながっているところは、だいぶ外国人を意識して導入しておられると感じています」(同担当者)という。思えば、JR九州の古宮洋二社長も、今年9月9日の記者クラブ会見でインバウンドについて「経営上非常に大事な数字」と述べていた。