資材価格が3割近く高騰、消費税率アップもひびく

北海道新幹線新函館北斗―札幌間の線区概要図。長万部―倶知安間には長万部方から内浦、昆布、ニセコ、羊蹄の4本のトンネルが連なります(資料:国土交通省)

ここから北海道新幹線です。国交省鉄道局は北陸新幹線を教訓に「北海道新幹線(新函館北斗―札幌間)の整備に関する有識者会議」(座長・森地茂政策研究大学院大学客員教授・名誉教授)の設置を決め、2022年12月までに4回の会合を連続開催しました。

国交省は、会議での議論を集約する形で2022年12月7日に報告書を公表。報告書に事業費増加と工事遅延が記載されていたため、社会問題化したというのが全体の流れです。

新函館北斗―札幌間は2012年に着工しましたが、その後に資材価格や工事費が上昇。5%から8%を経て10%へとアップした、消費税率も事業費を押し上げました。

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報告書で明らかにされた項目別の事業費増加額は、「予期しない自然条件への対応」が約2700億円、「着工後に生じた関係法令改正などへの対応」が約1340億円、「着工後の関係者協議などへの対応」が約670億円、「資材高騰など着工後の経済情勢変化への対応」が約2050億円で、合計約6760億円。一方で可能とされるコスト縮減は約310億円にとどまることから、差し引き6450億円の事業費増加が判明しました。

巨大な岩塊がシールドマシンの行く手をはばむ

さらに、報告書で明らかになったのが工事の遅れ。JRTTは長万部―倶知安間の羊諦トンネル(全長9750メートル)建設で、軟弱地盤に新工法・SENS(センス)を採用したのですが、山中に予期しない巨大で硬い岩塊が出現。マシンによる掘削を一時中断し、岩を取り除く工事を進めるものの、3~4年の遅れが見込まれる工区も出現しています。

羊蹄トンネルで発生した巨大岩塊への対応策。シールドマシン前方の岩塊を除去するため2022年4月から小断面トンネルを建設し、進行方向反対側から岩塊を除去します(資料:国土交通省)

SENSは、山岳トンネルを都市地下鉄のようなシールドマシンで掘り進む工法で、北海道新幹線では新青森駅―新中小国信号場間の津軽蓬田トンネルで実績があったのですが、道内では一部適用できない区間が発生しました。