北海道新幹線の開業時期は5年間前倒しされていた

ここで思い出したことがあります。北陸新幹線の章で紹介した2015年の政府・与党整備新幹線検討委員会では、北海道新幹線の開業時期も5年間前倒しされました。そもそもこの時の判断に無理がなかったのかを考える必要もありそうです。

「見通しの甘さ」を指摘するのは簡単ですが、これまで紹介したように、予測不可能な事態が事業費増加や工期遅延を招いたのは明らかです。

建設業界の常識からは、東京オリンピック・パラリンピックが終了して、本来なら資材価格や工事費は落ち着くはずでした。現在のような円安、世界情勢の不安定化は、誰もが予測できませんでした。

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現時点で最善の方策、それは報告書にある通り、JRTTは工法工夫などで極力工期遅延を回避すること。そして国、自治体、JR北海道などの関係機関は共通認識を持って、〝北の大地を走る新幹線〟の開業に向けた機運を盛り上げることが、今求められているように思えます。

2022年12月23日に閣議決定された令和5年度政府予算案では、北海道新幹線新函館北斗―札幌間の事業費として前年度より350億円多い1700億円が計上されました。

2023年の整備新幹線で話題の中心になることが確実な北海道新幹線。沿線街づくりに力を入れたり、国内外に新幹線をPRするなど、開業までに取り組めることは数多くあるはずです。

記事:上里夏生