三里木での乗り換えを見直し肥後大津からの直行ルートに

当初有力だったのが一番熊本寄りの三里木で、理由は沿線に熊本県民総合運動公園(熊本市東区)があるからです。サッカーJ2・ロアッソ熊本のホームスタジアムで、収容人員3万2000人。三里木と空港の間に中間駅を開設すれば、空港旅客にも観戦客にも対応できて一石二鳥。JR九州と熊本県は2019年2月、いったんは三里木からの分離ルートで合意しました。

しかし、三里木ルートには問題があります。豊肥線は熊本―肥後大津間(22.6キロ)が熊本都市圏。この区間は1999年の熊本国体(くまもと未来国体)を機に電化しており、肥後大津で運行系統が分かれます。豊肥線は全線が単線で、現状以上の列車増発は難しいのが実態です。仮に三里木で空港アクセス鉄道を分岐して、空港―三里木間を区間運転にすると、空港利用客は三里木での乗り換えが必要。また、熊本―三里木―空港間を直通運転にすると、三里木―肥後大津間の輸送力低下が懸念されます。

三里木ルートは同一ホーム対面乗り換えで考えられたのですが、スーツケースを持っての列車移動は同じホームとはいえ不便。そこで、浮上したのが今回、JRと熊本県が再合意した肥後大津ルートです。肥後大津止まりの列車を空港まで延伸すれば、熊本からの直通運転が可能になります。

台湾の半導体メーカーが沿線進出

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もう一つ、肥後大津ルートに追い風を吹かせたのが、経済ニュースで大きな話題になった、台湾の半導体大手・TSMCの熊本進出。2022年4月、菊陽町に着工された工場は2024年末の出荷開始を予定します。

約1700人の雇用を予定する工場へは、熊本空港経由の人事交流も盛んになるはずです。工場は原水駅北側。空港からの移動を考えれば、乗り換え不要な肥後大津ルートが有利になります。