〈熊本鉄道紀行・前編〉創業114年の熊本電気鉄道に乗り鉄してみた【コラム】
乗車してみると……下校の高校生で賑わい

それでは、午後の下校時間帯に重なる16時過ぎ、三ツ石ー御代志(折り返し)ー北熊本ー藤崎宮前のルートで、熊本電鉄に乗車してみましょう。
三ツ石は、前述のように九州道からの乗り継ぎ駅。駅上を高速が走ります。熊本電鉄の路線図も、「九州自動車道高速バス」をアピールします。ホームは1面1線で、無人駅ながら熊本電鉄ではSuicaやPASMO、ICOCA、SUGOCAなど全国の主なICカード乗車券が利用できます(熊本電鉄のバスも)。
間もなくやってきた御代志行きは、熊本電鉄では新鋭の03形電車。東京メトロ日比谷線からの転籍車で、2019年から熊本電鉄で営業運転されています。
整理券発行機が設置されるなど、若干の違いはあるものの、基本はメトロ時代のまま。東京で日比谷線を頻繁に利用したのを思い出し、非常に懐かしく感じました。
車内は、下校の高校生でかなりの混雑。買い物帰りらしい女性や、ビジネスマン風の方も見掛けます。
沿線には高専や医療センターも
熊本電鉄のルーツは温泉鉄道でしたが、今やその目的は熊本、合志の両市をつなぐ都市近郊鉄道へと進化しています。熊本電鉄沿線ではありませんが、合志市では2023年5月、ソニーグループが熊本県内2カ所目の半導体工場を建設する方針を公表して話題を呼びました。
経済成長が続くアジアに近い九州は、「シリコンアイランド」と呼ばれるほど先進企業の進出が続きます。訪日外国人の訪問先としても、九州は人気です。
熊本電鉄沿線には目立った集客施設はありませんが、ものづくり人材を育てる熊本高専や、国立病院機構の熊本再春医療センター(いずれも合志市)があって、ある意味では近未来の熊本の発展を先取りするエリアです。
わずか1往復の乗車でしたが、地域の勢いに乗って、今も進化や成長を続ける熊本電鉄ーーそんな印象を強くしました。