1995年に登場し、日本中の鉄道ファンに名が知られている883系『ソニック』は、先進的なデザインと制御振り子式車両のシステムが魅力です。

JR九州が「東九州のアーバンライナー」と称して運行しているソニックですが、現行車両はそのカラーリングから通称「青いソニック」と呼ばれています。

ソニックは「人間でいえばアイドル系」

883系ソニックは、JR九州の個性的な車両たちをデザインしている水戸岡鋭治氏が生み出した、同氏の最高傑作です。

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デザイン会議のプレゼンでは、水戸岡氏が「これは斬新すぎて採用されないな」と用意した案が採用されてしまい「よく通ったな」と振り返っていたとか。

そんなソニックは、運行を開始した当時、セルリアンブルーのヘッドに4つのカラーバリエーションが斬新なフロントパネルを採用していました。

車体側面はシルバーの波板状で、徹底したメタル感はまるで近未来の列車の匂いがしました。

声優のTARAKOさんによるナレーションで「人間でいえばアイドル系」と称されたテレビCMと相まって、ホームで入構を待っていた私たちを「お!今日はイエローか」などと楽しませてくれたものです。

新生した「青いソニック」は音速のメタリックブルー

2005年、日豊本線のそばを走る国道10号線を車で走っていた私は、ソニックとすれ違った際に強い違和感を覚えました。

「今のソニック、青くなかった?」

そうです、その年のリニューアルでソニックは外装のすべてを鮮やかなブルーメタリック一色に変えていたのです。

目の覚めるような美しい青に変身したソニックのカッコよさに魅入られた私は、通常なら飛行機で出張するところを「ソニック+新幹線で」とチケットを取り直してしまいました。

もちろん、わざわざ青いソニックに乗りたかっただけでしたが、ホームに入ってきた青いソニックのカッコよさは、まさに「音速のメタリックブルー」でした。

メカニカルなデザインにマッチしたカラーリングは、メカ好き男子の心をつかんで放しません。

青いソニックへのリニューアルで変更されたのは、車体色だけではありません。

奇抜なカラーリングだったシートは黒または茶色のシックな印象に変更し、自由席でもヘッドレストは本革仕様に。

グリーン車ではシートまで本革になり、885系『白いソニック』ばりのラグジュアリースタイルで乗客に高級感あふれる旅路を提供しています。

ソニックといえば、自然豊かな日豊本線の海岸沿いを走行する写真が多い印象がありますが、その近未来的なフォルムとカラーリングは、意外にも街の風景に溶け込みます。

青いソニックに乗り込むとき、まるでこれから音速のジェット機に乗り込むような錯覚に包まれるでしょう。

記事:鷹橋 公宣