車両全体
2017年1月11日(水)、東京メトロは中野車両基地構内において銀座線1000系特別仕様車両を報道公開した。

銀座線1000系特別仕様車両は、ホームドア設置などによるダイヤ改正に伴う編成増設で今年度2編成が導入される。これに伴い銀座線01系車両が全て1000系に置き換えられることになる。

東京メトロによれば「2012年から営業運転を開始した量産型1000系電車自体が”伝統と先端の融合”という銀座線のコンセプトに沿って旧1000形をモチーフにレトロ調のデザインで製作されたものだが、新たに導入される2編成はさらに旧1000形へのオマージュを込めたデザインにすることで、よりお客様に喜んでいただけることを主眼に製作した。また2017年12月に地下鉄90周年を迎えるに当たって、最初の地下鉄車両である旧1000形を強くイメージできる車両に造形しイベントなどでの利用も考慮した。」とのこと。(車両部設計課松本課長・談)

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まず、外観で最も特徴的なのは、前灯が2灯から1灯に変更された点。もちろんLEDである。
前照灯

また量産型では運転席上部がそのまま屋根のチョコレート色に繋がっていたが、旧1000形同様にこの部分にイエローが入った。前面ガラス部分にもイエローで窓廻りが分かる様になっている。尾灯の形状もより旧1000形に近い形に変更されているのが分かる。量産型1000系では銀座線のラインカラーであるオレンジとホワイト(側面部はダークブルーが加わる)のラインが有ったがこれが無くなっている。
車両前部

側面部では側出入り口がイエローに塗装され、開閉ハンドル、握り棒が真鍮色になっている。また旧1000形ではボディー強度を上げるために付けられていたウィンドシル、ウィンドヘッダーを模擬したデザイン処理が施された。前出の車両部設計課松本課長によれば「旧1000形のリベットを再現するか否か悩んだ末に、スッキリさせた方が良い、という方向で進めた」とのことだ。窓枠と中柱もイエローで仕上げられている。
車両側面

いずれにしても、外観からは旧1000形への想いがかなり「本気である」ことが感じられる。
銀座線1000系特別仕様車両

さて、内装もがらりと変わった。まずシートの色が違う。旧1000形のグリーンとは微妙に色調が異なるが、やはりグリーン系になる。量産型では白色に近かった内装も木目を感じさせるウッディーな仕上げになった。吊手も旧1000形のリコ式(バネではね上がるもの)を現代風にアレンジしたものになっている。
車内

車内照明はLED。通常時は4000Kの白色だがイベント用に2700Kの暖色系に照明色を換えられる様になっている。こちらは暖色系に照明を切り替えた時の写真だが、残念ながら太陽光が差し込んでいる関係もあって肉眼ほどは顕著な差が分からない。
照明暖色系

車内の製造者銘板も右から左に書かれていて、正に旧1000形のものを再現している。
製造者銘板

しかし、何よりも驚いたのが真鍮風に仕上げられた手すりだ。本物の真鍮にしてしまうと経年変化などでお客様の衣服などを汚してしまうことが危惧されるため、極めて手の込んだ塗装で「真鍮風」を再現しているのだ。
予備灯真鍮手すり

さらにスゴイのが予備灯。1993年(平成5年)頃までの銀座線に乗ったことのある人には懐かしい思い出だが、当時の地下鉄は駅の前後やポイントなどを通過する際に一瞬車内の電灯が先頭車両から順番に全て消えた。そしてその間、予備灯が点いていたのだ。その予備灯が再現されている。イベント用とのことだが「地下鉄博物館に保存されている旧1000形の予備灯を3次元スキャナーを使って可能な限り忠実に再現した」(前出・車両部設計課松本課長・談)という凝った一品である。
報道公開では車内灯を消して予備灯を点灯させていただいたが、やはり太陽光の下なので些か効果が分かり難い。
予備灯点灯

予備灯の造形は旧1000形から3Dスキャンして作られただけあって素晴らしい再現性だ。
予備灯細部
予備灯造形

細部にも「こだわり」が見られる。ほとんどの金具が真鍮風に仕上げられているのだ。
真鍮風金具

とにかく総勢80名という取材陣がスチールとムーヴィーのカメラを大量に並べ報道公開は大盛況であった。カメラ位置を確保するのがタイヘン!
取材カメラ

最後に車両部設計課松本課長を囲んで。様々な質問が飛び交ったが、にこやかに応える松本課長。この1000系特別仕様車両は1月17日(火)以降に運行が開始される、とのこと。
車両部設計課松本課長

子供の頃、実際に冷房のない1000形・1100形に乗ったことのある筆者には懐かしい思い出が呼び起こされる車両だった。

運行開始が待ち遠しい。