渋谷駅にやってきた東急東横線「Qシート」車両

東急電鉄は2023年8月8日、東急東横線で10日からサービスを開始する「Qシート」の報道陣向け試乗会を実施しました。

「Qシート」は2018年に東急大井町線で始まった有料座席指定サービスです。指定券を購入すれば当該車両に着席してゆっくり帰宅できるというもので、平日夕方以降の一部の列車で提供されています。

車両はロング・クロス転換車になっており、普段はロングシート、「Qシート」で運用するときはクロスシートに座席を切り替えて運行しています(※ロングシートのままの座席もあります)。

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東急東横線では平日夜19時30分以降に渋谷発 急行元町・中華街行きを5本設定。新造車両2両を組み込んだ10連の5050系を充当し、渋谷〜菊名間で4・5号車を全車指定席の「Qシート」としてサービスを提供します。

東急5050系車両。Qシート車両2両を組み込んで10連化した編成が現時点で4本あります
東急東横線「Qシート」車両。クロスシートの状態

車内設備や内装は大井町線の仕様に揃えており、こちらもロングシート・クロスシートの切り替えが可能です。座席数は4・5号車ともにクロスシートが36席・ロングシートが9席。座席幅は2列(クロスシート)が460mm、3列(ロングシート)が528mmと、ロングシートの方が若干広めです。

設備面では全席に電源コンセントを備えているのが嬉しいところ。どうしても仕事を持ち帰らなければならないときなどは便利です。一部の座席にはカップフォルダーもあり、車内Wi-Fiサービスが無料で利用できます。主なターゲット層はやはりビジネスマンになりますが、親子で利用される方もいらっしゃるようです。

全座席に電源コンセント付き。USBコンセントはありません
座席の背面にカップフォルダーがついています

渋谷から横浜や元町・中華街までゆっくり座って帰りたい方、また中目黒など途中駅から確実に着席したい方などに需要がありそうです。東急電鉄鉄道事業本部 運輸部運輸計画課の橋詰航季さんによりますと、東急東横線「Qシート」は東急大井町線と同じように長距離での利用が想定されているそうで、乗車率は7割ほどを見込んでいるとのことでした。

※東急大井町線の「Qシート」乗車率はおよそ8割。コロナ禍により一時的にサービスを休止しており、再開直後は6~7割程度だったそうです。なお、東急大井町線では時間帯によってはほぼ毎日満席になる列車もあるそうで、東急東横線でも夕ラッシュ直後の「Qシート」は争奪戦になるかも……?

東急東横線「Qシート」サービス概要

東急東横線の「Qシート」サービス概要を簡単にまとめます。

平日夜19時30分以降の時間帯に5本設定。渋谷発 元町中華街行きの急行列車として運行し、渋谷~菊名間は乗車・降車可能区間、横浜~元町・中華街間はフリー乗降区間となります(菊名~横浜間は列車指定券が必要です)。みなとみらい線内は座席が空いてさえいれば座ることができますので、ちょっとお得感がありますね。

東急東横線「Qシート」サービス区間(画像:東急電鉄)
東急東横線「Qシート」時刻表(画像:東急電鉄)

「Qシート」として運行中の4・5号車は全車指定席となっており、大井町線と同様に座席指定のための料金が必要になります。料金は大人・小児一律500円。乗車日当日の朝5時から当該列車の出発所定時刻1分前まで発売します。

「Qシートチケットレスサービス」ならスマートフォンやタブレットから購入できますし、東横線内の急行停車駅の改札窓口でも販売しています。ただし車内やホームでは発売されないということで、この辺りはJR東日本の普通列車グリーン車などとは異なります。

送り込みは「クロスシート」のまま

最後に鉄道ファン向けの情報をワンポイント。この東急東横線「Qシート」ですが、渋谷駅では座席のロング・クロス転換を行いません。というのも対象列車の渋谷駅折り返し停車時間が短く、座席の転換をするだけの余裕がないためです。

そこで、座席の転換は終点となる元町・中華街で行うこととし、渋谷へ向かう際の送り込みの列車は「渋谷駅からQシートに乗車した際に、進行方向を向いている状態」、すなわちクロスシートが逆向きのままで運行するそうです。

記事:一橋正浩

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