トップ画像は駅の写真ではありません。磐城石井駅から南石井駅に向かう途中。太陽が踏切のトコロまで当たっていますが、その向こうは雲の下。凄く不思議な前面展望なのです。

駅予告票まで来ると陽光は予告票まで当たっていますが、その先は暗いのです。列車の進行方向に晴れ間が移動している! 正面には阿武隈高地の山々、あの山の中に袋田の瀧があります。

磐城石井駅から1.1kmで南石井駅。何と南石井駅はホーム自体が蒲鉾板の様に反っています。駅が丘の頂点にあるのです。

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ここまで寄ってもホームの「反り」が分かります。駅を過ぎると勾配を下ります。

駅の手前(安積永盛駅側)の踏切から駅全景です。ホーム上に待合室があるダケの単式棒状ホーム。この写真でもホームが反っているのが分かります。駅の西側には農地が渺茫(びょうぼう=遠く遥かに)と広がっています。集落や商店は駅の東側、国道118号線沿いにかたまっています。

余談ですが、この渺茫という言葉、弟が生まれた時に父がヨーロッパに行っていて、その間3歳の筆者は父の姉の家に預けられました。それ以来、その伯母さんに凄く可愛がってもらったのです。この伯母さんが激変わっていて「学業お守り」代わりに彼女の小学校の通信簿をもらって持っているのですが、見事に全優、オール5なのです。大正の生まれです。何と彼女は、全大阪の小学生を代表して天皇陛下の前で作文を読んだという秀才。戦前の神格化されていた天皇陛下の御前ですよ。

その伯母さんが、一方で、夏はサングラスに麦わら帽子で洗濯を干している実にヘンなオバサンなのです。気がむくと家事をほったらかして古い本を読んでるし。その彼女が筆まめな人で流麗な筆でお手紙を下さるのですが、子供には達筆(たっぴつ=字が上手なこと)過ぎてとても読めなかった。(笑)

その彼女の口癖が「往時渺茫(おうじびょうぼう=過ぎ去った昔は遥かに遠くハッキリとは思い出せない)」だったので、中学生の時にこのクソ難しい漢字の言葉を覚えてしまったのです。オバサンが亡くなってからずいぶん時間が経ちましたが、伯母さんにもらった上田秋成全集(全巻ではありません)が書架にあります。しかし、上田秋成は「老後の楽しみ」などと嘯(うそぶ)いていましたが、そろそろ老後だよなぁ。読まなくっちゃ。

閑話休題(かんわきゅうだい=話をもとに戻します)

ホームに上がって水戸方面を見ます。

少しホームを進んで、駅名標を入れ込みました。

実はこの水戸方面の線路がまた凄いのです。南石井駅を頂点に下ってゆきますが、また上るというアップダウンが激しい。見ているだけでわくわくする様な線路の形です。手前の烏が何に集まっているのかは分かりません。

こちらは来し方の安積永盛駅方面。

山の間に農地が広がる長閑な風景です。

駅名標。1957年(昭和32年)開業。駅所在地は既に矢祭町、大字下石井です。

長閑な駅で周囲の緑を見渡していると、ホントに和んでしまいます。住むには色々と不便もあるかもしれませんが、田舎暮らしに憧れます。

では 水郡線全駅19【50代から始めた鉄道趣味】208 に続きます。

(写真・記事/住田至朗)