NTTドコモが、自社技術「docomo IoT高精度GNSS位置情報サービス」を使い、最高時速290kmで走行中のフォーミュラカーで、誤差約10cmの測位に成功。「今後、正確な車両位置の把握が必要となる自動車や鉄道の自動運転などで、高精度測位技術の活用をめざす」と伝えた。

12月4~6日、鈴鹿サーキット開催「2020年 全日本スーパーフォーミュラ選手権 第5戦/第6戦 第19回 JAF鈴鹿グランプリ」で、レーシングチーム「DOCOMO TEAM DANDELION RACING」と、日本電信電話が共同で実験を展開。

今回の実験では、同チームのフォーミュラカーにGNSSアンテナとLTE内蔵GNSS受信機を搭載し、高精度GNSSにLTE回線で接続。

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GNSS衛星からの電波と、ドコモの位置補正情報配信サーバーからの位置補正情報を使って高精度GNSS測位をリアルタイムで試してみた。

高速走行中のフォーミュラカーを利用した高精度GNSS(Global Navigation Satellite System:GPSなどの総称)測位実証は国内初。

この実証実験の結果、サーキット内に設置されたラップタイム計測用ビーコン通過位置と高精度GNSS測位結果の比較で、約10センチの誤差での高精度測位できることを確認。また、走行時間の96%で高精度測位できることも確認した。

「自動運転の実用化に向けた取り組みが加速するなか、高精度測位の需要が高まっている」

「高速移動環境における高精度測位が可能になると、自動車や鉄道の自動運転で正確な車両位置を認識した制御が可能に」

「また、線路・道路などの交通インフラを走行中に精密に点検できるようになることも期待できる」(NTTドコモ)

鉄道現場への展開も視野

こうした高精度測位技術は、鉄道現場への展開も視野に入れて開発がすすむ。

直近ではJR九州や日本信号が香椎線で実証実験を始めた列車自動運転は、もともと鉄道インフラにある自動列車停止装置 ATS-DK(Auto matic Train Stop-DK)をベースに開発した自動列車運転装置(高機能 ATO/FS-ATO:Auto matic Train Operation)を活用したモデル。

こうした車上・地上のシステムに加え、衛生との高精度GNSS測位を組み合わせると、「より高精度な動きで、人手不足にも貢献できる」という。

たとえば、通勤車や特急列車の増結・分割シーンや、機関車と貨車などを連結・解結するシーンなどで、これまで地上や車上の担当者がホームや機関車付近に立って目視で誘導していたのを、高精度GNSSで乗務員が位置を確認しながらクリアできるようになる。

高精度GNSSはまた、災害時に立ち往生した列車の位置の把握や、新幹線や高速列車の高密度化・安全性向上といった面でも、期待が高まる。

さらに、他社の境界を行き来するさいも、信号・保安システムの異なる境界を、高精度GNSS測位とあわせることで、より安全・正確に往来できるようになるかもしれない。

―――自動車やトラックのなかで実現にむけて動き出した自動運転。その技術が、鉄道現場にもじわりと波及している。