鉄道総研(公益財団法人鉄道総合技術研究所)は、列車自らが車上に集約した運行に関わる情報に基づき、進路上の安全を判断し、踏切などを制御しつつ安全かつ柔軟な運行を実現する『自律型列車運行制御システム』を開発したと発表しました。地上の信号設備によらず、車上のみで列車停止から運転再開判断までの自動化は世界初となる技術です。

このシステムを導入することで、列車運行に関わる省人化・省力化が実現できます。また、このシステムの要素技術の一部は、ドライバレス自動運転のさらなる安全性向上や現在の列車運行管理業務の省力化にも活用できます。

果たして、そのシステムを構成する要素技術は何なのか

鉄道総研では、鉄道の将来に向けた研究開発の一つとして「列車運行の自律化(自律運転)」を掲げ、2020年度から5年間取り組んできました。

自律型列車運行制御システムを構成するために開発された要素技術は、下記5点。

(1)カメラやLiDAR(Light Detection and Ranging)センサによる線路内や沿線の「前方支障物検知技術」
(2)線路内・沿線の状態や車両の状態などを集約する情報基盤である鉄道ダイナミックマップと、鉄道ダイナミックマップ上の情報に基づいて、「車上で自動的に運行判断をする技術」
(3)無線通信により「車上から地上の転てつ機や踏切を直接制御する技術」
(4)ダイヤ乱れ時の遅延波及防止・早期遅延回復などの運転整理や省エネルギー運転のための広域での「運行管理を自動的に行う技術」
(5)公衆通信回線の利用やサイバーセキュリティも考慮した「列車間通信・情報共有技術」

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実証試験によるシステム検証

各要素技術を適用した、本システムのプロトタイプの実証試験が鉄道総研所内試験線にて行われました。試験で行った機能確認は下記3点。

◆設定した運転パターンに従い、地上の転てつ機や踏切を制御しながら自動走行できるか
◆列車前方監視装置が検知した線路内支障物の情報が、車上の鉄道ダイナミックマップに登録され、その情報をもとに車上で列車の停止の要否を判断し、要の場合は支障物手前に停止できるか
◆線路内支障物除去後には、車上で自動的に運転再開可否を決定し、可の場合は自動走行を開始するか

列車前方の支障物検知による自動的な停止と自動的な運転再開の例(イメージ)

このシステムが導入されれば、運転業務のみならず指令など運行管理業務を含めた省人化や、列車本数が少なく駅の配線が単純で規模が小さな地域鉄道では、機器室などの削減が可能になります。

自律運転での省人化・省力化イメージ (現状の列車運行やドライバレス自動運転との比較)

(画像:鉄道総研、鉄道総研の試験車両R291形:PIXTA)

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