コロナの影響はわずか

コンテナ貨物に比べ地味な車扱輸送ですが、石油、セメント輸送などに一定のシェアを持ちます。 写真:tarousite / PIXTA

ここで途中下車をお許しいただき、最近のJR貨物の輸送動向をみましょう。2020年9~12月の2020年度第3四半期の輸送量前年同期比はコンテナ0.9%減、車扱0.3%増で、全体では0.6%減。前年は台風19号による列車運休があったので単純比較はできないのですが、旅客鉄道に比べると明らかにコロナの影響は小さい。いくらステイホームでも、食事しなければならない、クルマにガソリンを入れないと買い物にも出られないということなのでしょう。

輸送品目別で伸び率が高いのは、エコ関連物資の9.4%増、他工業品の5.2%増(以上コンテナ)、セメント・石灰石の5.3%増、車両の3.2%増(以上車扱)など。エコ関連貨物とは、資源リサイクル工場に運ぶ廃棄品貨物のことです。

産業界全体の物流動向は、日本通運のシンクタンク・日通総合研究所が2020年度と2021年度の「経済と貨物輸送の見通し」を発表しています。コロナ禍の2020年度は世界大恐慌に匹敵する経済の落ち込みが避けられないものの、2021年度は反動で個人消費、設備投資、輸出のいずれもプラスへの復帰を予想。JR貨物の輸送量は2020年度が前期比6.8%のマイナス、2021年度が4.3%のプラスを見込んでいます。

貨物駅スペースの有効開発で安定した収益を確保

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残りスペースが少なくなったため、開発事業は簡単に。不動産事業は、社有地の利用方法を見直して開発可能用地を生み出すほか、レールゲートを中心とする施設展開で、安定的な収益の確保につなげます。海外事業では、海外の貨物鉄道のコンサルティングや技術支援に参画。国際貢献を通じて、新たな事業機会の獲得を目指します。

2021~2030年の設備投資規模は4020億円程度で、維持・更新投資が約2250億円、成長・戦略投資が約1770億円。2023年を目標年とする現行の「JR貨物グループ中期経営計画2023」に掲げる利益目標(連結経常利益140億円以上)を安定的に維持できる収益基盤を築きます。JR貨物は長期ビジョン策定の狙いを、「10年スパンの企業像を提示することで、長期的視野で企業経営に当たるため」と説明します。

文:上里夏生