売る人、買う人、その周りの人、「三方よし」の近江商人の街―――滋賀 近江八幡。

滋賀県のほぼ中央、琵琶湖の東側に位置し、8万2,000人が暮らす近江八幡へは、大阪から新快速で1時間、東京から新幹線 米原乗り換えで2時間50分。

名古屋・京都・大阪とはまた違う歴史と街並みがつくる近江八幡には、織田信長が築いた名城を偲ぶ安土城跡、中世城郭を代表する日本最大の山城 観音寺城跡、ヴォーリズ建築などの歴史的遺産が点在する。

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和船が行き交う西の湖の水郷、琵琶湖畔独特のヨシ原、450年以上前から続く地域活性化事業ともいえる八幡掘など、彩り豊かな風情のなかに、都会とは違ったおだやかな時間が流れていて、おすすめ。

近江八幡駅から近江商人の街を抜け、八幡山へ

JR東海道線と近江鉄道 八日市線(万葉あかね線)が接する近江八幡駅から、八幡山をめざす。

標高271.9mの八幡山には、安土城が落城してから3年後、豊臣秀次(とよとみひでつぐ)が築いた城の跡がある。

最頂部に本丸、その周囲に二の丸、西の丸、北の丸があったけど、いまは石垣を残すのみ。その本丸跡には秀次菩提寺の村雲御所瑞龍寺(むらくもごしょずいりゅうじ)が京都から移築されている。

この村雲御所瑞龍寺が出現したのと同時期に、八幡山 公園前駅(山麓駅)と八幡城址駅(山頂駅)を結ぶ、全長543mの三線交走式 普通索道 八幡山ロープウェーが登場。

1961(昭和36)年にいまの国土交通省から認可を受け翌年から運行を始め、60年近く走り続けるロープウェー(鉄道)のひとつで、近江鉄道が運行している。

―――と、その八幡山ロープウェーに乗る前に、ちょっと近江八幡らしい街並みを。

近江商人の街が続く路地を、ゆっくり歩いていると、「ああ、少なくても半日はゆっくりこのあたりを歩きたい」と思ってしまうほど、落ち着く。

近江商人がつくった風情と機能性のある区画にいると、都会の喧騒も、過ぎてゆく時間も忘れてしまう……。

450年以上前からある地域活性事業「八幡堀」と、索道版 飛び出し坊やにこんにちは

わんちゃんが散歩する八幡堀は、1585(天正13)年、豊臣秀次(秀吉の甥)が八幡山に城を築き開町したころに開設。

秀次は、八幡堀と琵琶湖とをつなぎ、琵琶湖を行き交う船をこの城下内に寄港させ、人の交流や物流、情報の集積地として発展させ、街を拠点化・活性化させ、いまの近江八幡の街へと続いている。

まさに、450年以上前から、この地で水運を活用した地域活性事業がここ近江八幡で行われていたという、証。

また、最近では、水戸黄門、遠山の金さん、銭形平次、暴れん坊将軍 、必殺仕事人など、時代劇のロケ地としても注目を集め、時代劇ファンがその当時を想いながら歩くスポットとしても知られている。

その八幡堀をめでながら八幡山ロープウェー公園前駅(山麓駅)へとむかうと、出た! 飛び出し坊や(とび太くん)!

この飛び出し坊や、実は滋賀県八日市市(現 東近江市)が発祥の地といわれていて、ここ滋賀から全国へと広まったという。

八幡山ロープウェー公園前駅(山麓駅)の飛び出し坊や(とび太くん)は、ロープウェーから顔を出し、撮り鉄のようにカメラを片手に衝動的に動こうとしている!? これも映えスポットとして、チェック!

八幡山ロープウェーで琵琶湖畔の街や山を空中散歩♫

「はい、出ますよーっ」という係員の声にうながされながら、八幡山ロープウェーのゴンドラへ。

ゴンドラ(搬器)は、大阪車輌工業・安全索道が2005年につくったものらしく、そのプレートがゴンドラ内についている。

「へえ、大阪車輌工業か」と、スマホで公式サイトをみてみると、みんなが知ってる鉄道車両やケーブルカー、ロープウェーなども手がけているのがわかる。けど、ここは八幡山ロープウェーの絶景を楽しまないと! ということで、視線を車窓へ。

山麓から山頂へ約4分。ロープウェーってことで、全長の中央部分で対向(下り)のゴンドラの客と手を振って、眼下に目をやると、碁盤の目のようにつくられた街がどんどん遠ざかっていく。

山頂からは四季折々の琵琶湖・西の湖・旧城下町などが見渡せる大パノラマが体感できるということで、焦る気持ちをおさえて、まずは西の丸へ。

西の丸の“住人”に話しかけるカップル、琵琶湖と比叡山の絶景に「うわーーっ!」

八幡山ロープウェー山頂駅でゴンドラを降りて、おねがい地蔵、瑞龍寺(村雲御所)と続く山道を登っていくと―――西の丸。

西の丸には、ここに古くから住んでいると思われる“住人”、猫ちゃんたちが静かに出迎えてくれる(というか観光客に興味なし)。

視線ははるか遠く。「おれはいいから西の丸からの絶景を早くみてみろって」といわれて、視線を大パノラマへ―――。

「うわーーーーーっ」「あっらあーーーーーーーーーー」

西の丸からは、トワイライトに染まる琵琶湖と比叡山から続く山々の、淡いコントラスト。その先に沈む夕日のグラデーションに、過ぎていく時間を忘れてしまう……。

手前のこんもりした山にあるのが、水茎岡山城跡。水茎岡山城は、大内義興に都を追われた将軍 足利義澄が落ち延びた城。

城主 九里信隆がかばって守り、のちの将軍である足利義晴もこの城で誕生している。

その水茎岡山城跡のある山の先、遠くに連なる山が、左から比叡山、比良山地など。比叡山は、水茎岡山城の先の連なる山の左側、ちょっと尖った山がそれ。

北の丸からは、安土城跡や西の湖! いま絶好シーズンの八幡山ロープウェーで

こんどは西の丸からぐるっと裏手に回って北の丸へ。

北の丸からは、また違った表情を見せる。安土城跡や西の湖、霊仙山(りょうぜんやま)、伊吹山がみわたせる。

―――このゆっくりした八幡山時間が、めっちゃいい感じ。標高300m弱といっても、油断は禁物。きーんと冷える寒さがまた山頂を思わせる心地よさ。防寒着は忘れずに。

そして! 八幡山ロープウェーは、11月28日まで、夜間延長営業を実施中!

通常運行は17時までのところ、紅葉と夜景が映える秋の11月28日までは、18時30分まで運行時間を延長しているから、滋賀へ出かけたら八幡山ロープウェーでその絶景を、目の当たりにしてみて。

ってことで、山頂にある恋人の聖地やハート型フォトスポット、日が暮れたあとの八幡山の秋の風物詩「竹あかり・竹灯篭のハーモニー」など、カップルやグループ、おひとりさま、猫好き(!?)たちでにぎわう山頂の夜の雰囲気と、観光客が「並んでも食べたい」という山麓の近江牛絶品すき焼きについては、またこんど―――。

<近江鉄道で行く滋賀の旅>
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画像:鉄道チャンネル
記事:鉄道チャンネル(https://tetsudo-ch.com/