試乗会で体感、西九州新幹線の確かな実力 乗り心地は抜群、大村湾も車窓に【レポート】
西九州新幹線の武雄温泉~長崎駅間(約66キロ)開業に先立ち、2022年9月10日、佐賀~長崎駅間で報道陣を対象とした試乗会が行われました。
報道陣は佐賀駅から885系「リレーかもめ」に乗車し、肥前山口駅から佐世保線経由で武雄温泉駅へ。到着後は西九州新幹線N700S「かもめ」へ対面乗り換えを行い、嬉野温泉駅、新大村駅、諫早駅での運転停車を経て長崎駅へ到着しました。新幹線の乗車時間は30分ほどです。
初めて西九州新幹線に乗車してみて感じたのは、そのポテンシャルの高さです。武雄温泉~長崎駅間はトンネル区間も多いのですが、大村湾などが見える瞬間もあり、そして何より、新幹線乗車中の30分間はとても居心地の良いものでした。
新幹線は乗り心地抜群、でも在来線の変化も楽しめる
試乗会で「リレーかもめ」に充当されたのは885系特急電車です。曲線の多い線区を高速で走行するため、カーブを曲がる際に車体そのものを内側に傾斜させる「振り子式」の車両で、その独特な揺れは鉄道ファンの間でも好みの分かれるところである、と言われています。
今回は長崎本線走行中に何度も強い揺れを感じたのですが、佐世保線へ入ると驚くほどマイルドな乗り心地に変化しました。単線区間で速度を落とした影響もあるのでしょうが、2022年2月末に大町~高橋駅間の複線化が完了した影響もあるのでしょう。今まで「揺れるから」という理由で885系を敬遠されていた方も、この区間に乗れば印象が大きく変わりそうです。
しかし西九州新幹線「かもめ」はこの印象をさらに上回りました。JR東海が最新技術の粋を集めて作り上げた新幹線車両「N700S」を現代の技術で作り上げた最新の線路で走らせたらどうなるのか? ご想像の通り乗り心地は抜群です。自由席車両でさえ「少し縦に揺れる」と感じる程度で、走行音もほぼ気になりません。
たとえるなら大きな声で話す必要のある工場から冷房の効いた静かなオフィスに移動したような感覚です。大げさな表現として捉えられてしまうかもしれませんが、試乗会中は列車の振動・騒音より後ろの座席の人が背面テーブルを操作するのが気になるほどでした。開業したらぜひ走行中の車内の音を録音して聞き比べてみてください。
眺望を求めるならD席・E席が良い?
乗り心地は新幹線の圧勝として、では眺望はどうなのか。これはさすがに在来線の方が上でしょう。西九州新幹線は内陸部を走るうえ、その多くがトンネル区間であり、騒音対策として高い防音壁が設置されています。
それでも眺めの良い場所はいくつかあり、たとえば嬉野温泉駅から新大村駅へ向かう途中では、大村車両基地や大村湾が見えました。さらに新大村駅から長崎駅間では、大村湾に加えて長崎空港も。試乗会でも「上手く行くと離着陸する飛行機が見える」といったアナウンスがありました。
良い景色が多かったのは長崎行の進行方向右手側。座席配置2+2列の指定席車両なら窓際はD席、3+2列の自由席車両ならE席です。武雄温泉行も同様ですから、東海道新幹線で富士山を見たい人が座席を選ぶように、西九州新幹線で窓際のD・E席を狙う人も出てくるでしょうか。
なお、JR九州は西九州新幹線開業と同時に新D&S列車「ふたつ星4047」を投入します。武雄温泉~長崎駅間を午前は長崎本線経由、午後は大村線経由で走る観光列車を用意して、海沿いを存分に堪能できるようにします。
西九州新幹線の開業は2022年9月23日。新たな「かもめ」の登場まで、あとわずかです。
記事:一橋正浩