旅するレストラン「52席の至福」7〜9月のメニューを試食 後半 ディナーコース紹介
第2部は西武秩父駅前温泉「祭りの湯」で温泉を堪能
今年の4月にオープンした「祭りの湯」、以前は秩父鉄道御花畑駅に向かう「仲見世通り」があった場所に「祭りの湯」「祭りの宴(フードコート)」「ちちぶみやげ市」の3つの施設が入る大きな建物が出来ています。左の平屋部分に「ちちぶみやげ市」、右の2階建て1階が「祭りの宴(フードコート)」と「祭りの湯エントランス」があって温泉施設は2階にあります。
西武秩父駅の改札を出て左方向にはすぐに、西武秩父駅前温泉「祭りの湯」というエントランスがあります。「ちちぶみやげ市」の入口になっています。
入るとすぐに「売店」があって、西武鉄道を利用する人のために早朝から開いています。こぢんまりとした駅コンビニですね。ATMも設置されています。
ちちぶみやげ市には秩父特産物が土産物として揃っています。
西武秩父駅前温泉「祭りの湯」のホームページ(https://www.seibuchichibu-matsurinoyu.jp/matsuri/)には平面図がありました。
※画像は「祭りの湯」ホームページより
酒匠屋台には地元の酒蔵の酒をはじめ様々なお酒が並んでいました。何と「ちょい飲みコーナー」もあって、関西の酒屋さんの「角打ち」、つまり最近流行っている「立ち飲みコーナー」があります。これはお酒の好きな人にはたまらないですね。
秩父美人屋台は秩父銘仙を使ったものが中心のコレクション。
ちちぶみやげ市の隣には「祭りの宴(フードコート)」があります。8店舗が秩父蕎麦(麺類)、わらじカツ丼、秩父味噌ラーメン、秩父味噌ポテトなど地元の味を提供しています。実際にお祭りで担がれる御神輿が飾られています。秩父エリアは年間300ものお祭りがあるそうです。だから「祭りの湯」なのですね。
これが「祭りの湯エントランス」ここから先は撮影できません。上記の「祭りの湯」ホームページをご覧下さい。
第3部 西武旅するレストラン「52席の至福」ディナーコース
さて武甲山の見える露天風呂にゆっくり浸かってすっかり寛いだ気分で、第3部旅するレストラン「52席の至福」ディナーコースに向かいました。15時に西武秩父駅改札で集合してホームに。
既に厨房ではディナーコースの準備が始まっていました。
前菜はブランチコースと同じです。大人のディナーコースとして秩父の名酒武甲正宗の冷やした小瓶を飾っています。蒸発が速いのは気のせいです。
日本料理の成田シェフによる”すっぽんの冷やし茶碗蒸し”、一番出汁で上品に仕上げた汲み上げ湯葉、すっぽんのジュレ、とんぶり、浅葱、花穂をのせた茶碗蒸しをいただきます。確かに「美味しい」としか表現のし様がない絶妙な味と食感のハーモニーです。
意表を突くスープは藤尾シェフによる”岩魚すし キュウリとキウイのグリーンガスパチョ”、奥秩父名物の岩魚すしですが、マリネしてから香ばしく炙った埼玉県特産の岩魚を寿司飯ではなく最近注目されている南米アンデス産の穀物「キアヌ」で包みキュウリで巻いてあります。スペイン料理の冷製スープガスパチョに浮かべられていますが、ガスパチョもキウイ、キュウリ、ヨモギというスペインにはあり得ない独特の組み合わせです。緑の上に菊の花びらが鮮やかで視覚的にも美しいです。
一瞬、青臭いかな、と予想しましたが、全くの杞憂でした。ガスパチョと一緒に岩魚すしを食べると、何とも言えない不思議な味わいです。岩魚すしを食べているという感じではありません。ヨク分からない美味しいものを食べている感覚だけが残ります。
さて、メインディッシュは井上シェフによる”蜜汁火局牛肉〜牛肉の豆鼓オーブン焼 四川の香りをのせて〜”、骨付きカルビ肉を豆鼓(トウチ、日本に伝わって大徳寺納豆などの寺納豆になったと言われる中国の食品)、オイスターソース、紹興酒、蜂蜜などで作った特製のタレに漬け込みオーブンで丁寧に焼き上げてあります。仕上げに四川省随一の名酒「五粮液酒」の香りをまとわせています。ライチ風味を付けたプチトマトのシャーベットと湯むきした焼き野菜が添えられています。
「五粮液酒」を知らないのでその香りの精髄がよく分からないのが残念ですが、とにかく普通のカルビ肉とは全く違う実に不思議な香りに包まれていて、ある種、洗練の極と言った感じです。ライチ風味のプチトマトシャーベットがこの玄妙なカルビ肉とよく合っていました。
食事の〆は成田シェフによる”夏が香る鮎の冷汁うどん”。夏の香りを鮎に求めた一品。しかも鮎の出汁をベースにしたスープに浮かんだ滑らかなうどんに、豆腐、白瓜、茗荷、大葉、スダチなどの夏の食材が華を添えています。さらに驚くのが鮎と相性の良い蓼(タデ)のパウダーがアクセント!
これも「食べたことない美味しさ」としか表現できない繊細極まるうどんです。香りと舌触り、スープの奥深い味わい、もう見事でした。惜しむらくは上品過ぎて・・・既にたくさんの料理をいただいているのに、もっと食べたくなる魔法の様な冷汁うどんなのです。
最後は井上シェフによるデザート”百香果西米露〜チャイニーズ・トロピカル・スイーツ〜”。西米露はタピオカですね。中央に太陽の如く収まっているのは何と杏仁豆腐のアイスにマンゴーのソースがかかったもの、その周りをココナッツミルクにタピオカが浮遊し、グレープフルーツも浮かんでいます。これがまたサッパリかつマッタリしていて美味しいのです。もう至福のディナーコースでした。御馳走様。
デザートを終えた頃には西武旅するレストラン「52席の至福」は上石神井車両基地に到着です。1977年(昭和52年)にデビューした2000系と2000年(平成12年)デビューの20000系が仲良く並んで駐まっています。
広大な車両基地を抜けて上石神井駅に向かいました。車両たちは夕方の帰宅時間に向けて出払っています。
西武旅するレストラン「52席の至福」、7〜9月のメニューは夏らしい華やかさと秩父の木々を吹き抜ける風を思わせる密かな涼しさを浮かべたコースでした。これは本当に、至福でした。
(写真・記事/住田至朗)