雪の多いエリアに住む人には、見るのもウンザリかもしれませんが、関東の南端、三浦半島辺りで暮らす人間にとって雪景色は、珍しくて、美しくて、見とれてしまうものです。

松尾芭蕉も句で

面白し雪にやならん冬の雨

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と雪を楽しみにする心を詠んでいます。

斯くして、わざわざ雪景色を眺めに鉄道旅に出かけます。トップ画像をご覧あれかし。信号の青以外に色彩が存在しません。会津若松駅を北側のホテルから観ています。筆者が世界のクロサワなら「目障りな電線を笑え!」と言いたいところですが。(笑)

※笑う=どける、という映画業界の隠語

駅前広場にも色彩は幽かな信号の色だけ。

こちらは会津若松駅を背に駅前広場。

2019年1月9日(水)午前8時過ぎの会津若松駅1番線ホーム。

郡山から磐越西線が到着、8:11発の郡山行になって折り返します。

関東で50年も暮らしていれば、雪が降って難儀したことは何度もあります。しかし、それは束の間のこと。雪景色は無条件に視界を白く満たし、日常の物音は柔らかな雪に溶け、世界はひたすら静かに白く美しく佇むのです。

雪見障子から静かな雪景色をぼんやり眺めながら、温い燗酒を吞む炬燵が日本でしょ。

いくたびも雪の深さを尋ねけり 獺祭書屋主人

病床の子規も雪合戦を楽しみにする子供たちの心をどこかに持っていたのでしょうね。

(写真・記事/住田至朗)