大井川鐵道の蒸気機関車C11形190号機 営業運転15周年「門デフ」で川根路を快走します

大井川鐵道のC11形190号機は、1940(昭和15)年、川崎車両で製造されました。九州の早岐機関区(長崎県)や熊本地区などを中心に活躍した後、1974(昭和49)年、熊本で廃車になりました。

廃車後は熊本県八代市の個人所有となっていましたが、2001(平成13)年6月、大井川鐵 道に入線。2003(平成15)年7月19日から営業運転を開始、今年で15周年を迎えます。

デフとは?


SLの正面両脇には除煙板(デフレクター、デフ)が取り付けられています。これは走行中、煙突から出る煙が車体や運転席にまとわりつかないように気流を変えるための重要部品です。

しかし、除煙板の下にはSLの駆動力を伝えるシリンダーがあります。保守・点検の際に除煙板の存在は煩わしいものでした。何とか改良ができないものか・・・調査・検討の結果、除煙板の下部は気流変化の影響の少ないことがわかり、戦後、九州の国鉄小倉工場では下半分を省略し、山形鋼で固定した「小倉工場式切取除煙板」が誕生しました。

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九州で活躍するSLの多くに採用され、名称は小倉工場が門司鉄道管理局管内にあることから「門デフ」と呼ばれるようになりました。車両整備現場からは作業の軽減化を図ることができると歓迎され、鉄道ファンからは「九州を走るSLを象徴するスタイル」として喝采をあびました。「門デフ」を付けたSLは国鉄時代から大人気となったのです。

なぜ 門デフに交換するのでしょうか?

C11形190号機は九州地区を中心に活躍をしてきた蒸気機関車ですが、廃車時までの国鉄時代には「門デフ」を付けた実績がありません。

「門デフ」の取り付けは、大井川鐵道でのSL列車が大井川本線(金谷〜千頭)を1976(昭和51)年復活運転を開始した40周年を記念して、2016(平成28)年1月〜3月に期間限定で行われただけです。
今回は、C11形190号機営業運転15周年の節目を迎える2018(平成30)年に、ふたたび「門デフ」を取り付け、九州地区でSLが鉄道の主役だった時代の再現を試みようと実施するものです。

運転予定日

大井川鐵道は蒸気機関車が世間から前時代の旧弊と蔑視されていた1976年(昭和51年)に、いち早くSL急行「かわね路号」を走らせ、動態保存の試みを始めたパイオニアです。

1955年(昭和30年)に全国に4897両あった蒸気機関車は、「かわね路号」が運行を開始した1976年には事実上ゼロになっていたのです。当時の国鉄は「SL廃止が進歩であり善である」という立場から廃車となったSLを私鉄へ譲渡することを拒否していました。廃車にしたSLを整備して走らせるなど「歴史に逆行する行いである」として全面的に否定していたのです。

そういう時代に、逆風のSL復活を実行した大井川鐵道白井昭氏の慧眼と御苦労には、本当に敬服します。白井氏の事跡についてはこちらをどうぞ。

※2014年9月撮影