札幌市の公共交通機関は1909年の馬車鉄道に始まります。1918年に民営の路面電車に切り替わり、1927年に路面電車事業が引き継がれて市営交通が発足しました。路面電車は道路事情の変化や地下鉄の開業によって縮小されましたが、2015年にループ化されて市民の足として活躍しています。詩情あふれる札幌の街を一周してみましょう。

昭和時代からライオンが見守る「西4丁目停留場(SC01)」

札幌市営地下鉄の大通駅が至近

市電は停留場ごとにSC01からSC024までナンバリングが表示されています。まずは起点となる「西4丁目」から出発しましょう。4丁目停留場は1918年に開業しました。1932年の札幌三越開業を受けて、1948年に「4丁目三越前停留場」、翌年に「三越前停留場」に改称されたのちに、1965年に現在の名称に変更されています。時代は変わってもライオンはずっと市電を見守り続けています。

西4丁目はいつも活気にあふれている

2015年12月にループ化されるまで西4丁目に到着した市電は、すすきのへ折り返し運転となっていました。付近にはファッションビルなども多く活気にあふれています。

観光スポットをさりげなく通過

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西4丁目を出発した市電は「赤レンガ道庁」を右車窓に映しながら一路西へ向かいます。赤レンガ道庁は札幌を代表する観光スポットです。1888年に建てられたアメリカ風ネオ・バロック様式の建築物の前を2018年に営業運転を開始した1100形「シリウス」が通り過ぎて行きます。

札幌三吉神社を参拝「西8丁目停留場(SC02)」

ビルに囲まれながらも神聖な雰囲気が漂う札幌三吉神社

ほどなくして市電は「西8丁目」に到着します。ここで下車して地元の人から「さんきちさん」と呼ばれ親しまれている「札幌三吉神社」を参拝しましょう。秋田県の三吉神社から分霊された古い歴史を持つ神社で、大巳貴神(オオクニヌシ)、少彦名神(スクナビコ)をはじめ5柱が祭られています。

静かな朝の境内に電車の音だけが響く

静粛を切り裂いて鳥居の向こうを市電が駆け抜けて行きました。札幌三吉神社は合格祈願にご利益がある神社として知られ、境内の絵馬には切実な願いが書かれていました。毎年5月には札幌市内でいち早く例大祭が開催され普段にはない賑わいを見せます。

大倉山ジャンプ競技場を背にする「中央区役所前停留場(SC03)」

大倉山を背に「雪ミク電車」が走る

中央区役所前停留場後方にそびえているのは、1972年に札幌オリンピックのスキージャンプ競技が開催された「大倉山ジャンプ競技場」です。標高差133.6 m・傾斜長 403.8 m・全長368.1 mで、現在もさまざまな大会が開催されるなど、札幌オリンピック終了後も活用されています。

顔に見える「ニチレイ」のラッピングがユーモラス

札幌医科大学に近い「西15丁目停留場(SC04)」

待たずに乗れるのも市電の魅力

西15丁目停留場は、かつて「交通局前」と呼ばれていましたが、札幌市交通局庁舎の移転に伴い1982(昭和57)年に現名称に改名されました。すぐそばには札幌医科大学及び医大病院があり、多くの人が利用しています。

鉄路は「山鼻西線」へと続く

西4丁目から西15丁目までが「一条線」と呼ばれています。ここから先は「山鼻西線」「山鼻線」「都心線」と続き、車窓は大都会から住宅街と移り変わっていきます。引き続き全長約9㎞の旅を楽しみください。

文/写真:吉田匡和