現役時代(右上)と現状を並べたキハ222のクラウディングサイト  画像は三鉄ものがたり実行委員会の資料から

茨城県のひたちなか海浜鉄道で、5年前に引退した気動車を〝ご神体〟に鐡道神社を創建しようという活動が、11月5日から地元・ひたちなか市の市民団体「三鉄ものがたり実行委員会」の手で始まった。1971年から2015年まで運行された旧形気動車のキハ222は老朽化が進むが、実行委は修復と再塗装の費用をクラウドファンディングで募る。

キハ222は1962年製で、北海道や東北で活躍した国鉄気動車のキハ22とほぼ同形。北海道の羽幌炭鉱鉄道が導入したが、1970年の炭鉱閉山で鉄道が廃止され、海浜鉄道の前身の茨城交通湊線に移った。海浜鉄道では全国でも数少ない旧形気動車としてファンの人気を集めたものの、いわゆる車検切れで2015年に廃車。その後は終点の阿字ヶ浦駅で保管されてきたが、海岸に近く潮風で車体がさびるなど老朽化が目立っている。

キハ222に目を付けたのが、鉄道ファンや街づくり関係者で構成する三鉄ものがたり実行委。名称は、海浜鉄道がひたちなか市などの出資で設立された第三セクター鉄道という点に由来する。実行委の佐藤久彰代表らは気動車が44年間無事故だったことから、「交通安全や長寿のご利益をアピールしたい」と張り切る。神社は阿字ヶ浦駅に創建予定。参拝を望むのは鉄道愛好家で、国内外にブームを呼ぶアニメの聖地に倣い「気動車ファンの聖地」を目指す。

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構想には海浜鉄道も賛同し、クラウドファンディングに共催、ひたちなか商工会議所が後援する。募金は早期スタートを予定していたがコロナの影響で遅れ、本格的な修復や再塗装は2021年春以降を予定する。目標額380万円で、募金はREADYFORのサイトから。締め切りは12月20日。協力者にはキハ222復活の様子を記録したDVDなどが贈られる。実行委メンバーは、「神社創建後はさまざまな活動を展開して、活力ある地域づくりを目指したい」と話す。

文:上里夏生