JR九州が力を入れる「駅の価値をさらに高める街づくり」のイメージ

JR九州は2021年度、総額1240億円を設備投資して、西九州新幹線用の車両新造に加え、長崎、福岡、鹿児島の3都市圏で、駅を中核とした街づくりなどに取り組む。同社の設備投資計画は、2021年3月期の決算説明資料で明らかになった。2020年度の設備投資実績は651億円で、2021年度計画額は約1.9倍に増える。年間1000億円を超す設備投資計画は初めてで、過去最高になる。西九州新幹線には、東海道・山陽新幹線と基本は同形のN700Sを新造・投入する。

分野別の投資額は、車両新造や駅街づくりといった成長投資が799億円で、2020年度実績の390億円に比べほぼ2倍に増額される。車両や施設などの維持更新投資は441億円で、2020年度実績(260億円)の1.7倍に相当する。維持更新投資のうち、安全投資は4割強を占める195億円。

2020年度はコロナ禍を受けて設備投資を抑制した。しかし、実際にはコロナの影響は想定より少なかったとされ、「構造的な問題への取り組む期間」と位置付ける2021年度は、積極投資を実施する。

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JR九州は設備投資の前提になる「コロナで判明した経営課題」として、「安全・安心な商品やサービスへの需要の高まり、テレワーク、オンラインに代表される新しい働き方への対応」を挙げる。同社は魅力あるD&S(テザイン&ストーリー)列車で観光需要を喚起して成長を遂げたが、観光は感染動向に左右される点が否定できず、今後は自社で九州の魅力を発掘・発信するなど、「九州の元気をつくる取り組み」を強化する。

成長の軸になるのが2022年秋開業予定の西九州新幹線で、車両新製以外では、新幹線・在来線駅に生まれ変わる長崎駅周辺開発で、新しい駅ビルや高架下開発を進める。新駅ビルは2023年秋に全面開業、高架下施設は一足早く2022年春の開業を予定する。長崎以外では、博多駅の空中都市構想や鹿児島中央駅の西口開発に取り組む。

鉄道事業のコスト構造改革では、車両運用の見直しをはじめとする需要に即したサービスの提供を加速させ、車両・設備をスリム化する。

文:上里夏生
(画像:JR九州)