リニア「神奈川県駅」の工事現場法面にプロジェクションマッピングでコンセプトムービーなどを投影。リニア中央新幹線車両が走行する様子、工事概要や自治体のシティプロモーション映像が流れるさまは、巨大なスクリーンを使った夜間上映会のようでした
昼間の法面の様子(2022年5月撮影)

JR東海が建設を進める「リニア中央新幹線」――その「神奈川県駅」(仮称)は神奈川県相模原市のJR・京王「橋本駅」付近に設置される予定です。

この神奈川県駅工事現場を活用し、2022年10月1日から4日にかけて「さがみはらリニアビジョン」というイベントが開催されました。その内容は、

・法面(のりめん)にプロジェクションマッピングで映像を投影
・高さ約6メートの盛土へ「登ってみる」体験
・リニアの模型や実物の大型重機を展示

ADVERTISEMENT

……といったもので、JR東海としては地元の方向けの大規模イベントをリニア中央新幹線の工事現場において開催するのは今回が初めて。

9月の社長会見後にWEB上で申込を募ったところ、約2,600名分(4日間合計)の申込枠はほどなく満席となってしまったそうで、世間的な関心の高さがうかがえます。

工事概要も映像化することで分かりやすく立体的に説明します
工事現場で掘削した土は一部をヤード内に保存し、駅の埋め戻しに使う計画です。埋め戻すまでは工事ヤード内に安全を確保した設計・施工で盛土し、仮置きします。参加者らは盛土に登り、その安全性を体感しました
工事に使用する重機などを展示、参加者の中でも特に子供たちに人気で、重機の前で記念撮影する姿も見られました
JR東海、施工会社、神奈川県、相模原市が展示ブースを出展。参加者らにシールドマシンの説明などをする場面も

初回となる10月1日には点灯式も開催され、JR東海金子慎代表取締役社長、赤間二郎衆院議員、黒岩祐治神奈川県知事、本村賢太郎相模原市長、工事を担う奥村組の奥村太加典代表取締役社長らが出席。イベントの趣旨やリニア中央新幹線開業に向けた思いを語りました。

「イベントを通じて中央新幹線の事業、工事についてのご理解を深めていただく一助になればと期待しております」(JR東海金子慎代表取締役社長)

もちろん、地元の方々への感謝の言葉も忘れません。そもそも神奈川県駅の建設において「法面で掘削する」という効率的な手法が採用できたのは、長い歴史のある県立相原高校が移転に応じてくれたからこそ。「さがみはらリニアビジョン」はJR東海と自治体の良好な関係なくして成り立たないイベントであったとも言えます。

「さがみはらリニアビジョン」点灯式の様子
質疑に応えるJR東海金子慎代表取締役社長(写真中央)

リニア「神奈川県駅」は深さ約30メートルまで掘削が完了したのち、底部から駅構造物を構築し埋め戻します。プロジェクションマッピングで映像を写した白い法面も、いずれ地中に隠れる運命にあります。数年後に消える法面を「巨大なスクリーン」として活用するという取り組みは工事中にしかできないことで、参加された方には大変貴重な経験になったのではないでしょうか。

リニア中央新幹線は現在、2027年の名古屋開業へ向けて工事が行われている段階で、開業すれば品川~名古屋間は約40分(品川~大阪間は約67分)で結ばれることになります。

記事:一橋正浩

<鉄道チャンネル 関連記事>
リニア「神奈川県駅」報道公開 2つの開削工法で掘り進められる広大な地下空間
https://tetsudo-ch.com/12452984.html